第4章137話:技術提供の提案


「それは、まことか?」


女王が尋ねてくる。


私はうなずいた。


「真実です。嘘だとお思いでしたら、調査隊を派遣して、調べてもらっても構いません。もっとも、フレッドの死は秘匿されているかもしれませんが」


「……確かに、軍神フレッドが死んだなどという情報は、そうそう明かせはしまいな。つい最近、我々も英雄を失ったばかりじゃから、よくわかる」


「……それは、その、申し訳ありません」


イグーニドラシェルを殺したのは私たちだ。


なので、謝っておく。


「いや、責めたわけではない。事情を聞くに、イグーニドラシェルのほうに非があったことは明らかじゃからな」


そう言っていただけて助かる。


……と。


そこで、私は、ここ数日考えていたことを話すことにした。


「あの……私からも話があるのですが、よろしいですか?」


「ん……? なんじゃ?」


「まず、謝罪をさせてください。此度の件では、リズニス王国には多大なご迷惑をおかけしました」


いや……


迷惑なんてものではないな。


自分で言うのもなんだけどね。


即座に処刑されないだけでも、寛容すぎる処置だ。


「本当に申し訳ありませんでした。つきましては、お詫びとして、私からリズニス王国へ、技術提供を行いたいと思っているのですが」


「技術提供……じゃと?」


「はい。陛下もご存知の通り、私は、ドラル・サヴローヴェンの遺跡を解いた錬金魔導師です。自画自賛にはなりますが、錬金魔法に関して、腕には覚えがあります」


「ふむ」


「ですので、この国の技術開発に、何かしらの貢献ができればと考えています。是非、ご一考いただければと」


今しがた述べたように、私は、リズニス王国に多大な迷惑をかけてしまった。


その賠償というわけではないが、埋め合わせができないかと考えたのである。


特に、武力面。


現在、イグーニドラシェルを失ったリズニス王国は、戦力が激減していると思われる。


そこを補填してあげないと、国そのものが危うい状況に置かれる可能性もある。


「おぬしの錬金技術が、非常に優れているということは、シャーロットからも聞いている。ここ数日、シャーロットとは色々な話をしたからな」


「そうでしたか」


「技術提供というのは、悪くない。おぬしはどう思う、ヒューネ?」


「はい、私も良い提案だと考えます。ドラルの術式を解いたのでしたら、実力は確かでしょうし……ただ、できれば錬金魔法の成果物を見てみたいというのが本音ではありますね」


「なるほどな。わらわも同感じゃ。いかがじゃろうか、エリーヌ・ブランジェ?」


「承知いたしました。そういうことでしたら、私のキャンピングカーをご覧になってはいかがでしょう?」


「キャンピングカー……シャーロットがしきりに口にしておったな。とてつもなく高性能な、新型の馬車であると」


「はい。私の自慢の愛車でございます」


謙遜はせず、強調しておく。


そもそも異世界では、あまり謙遜は好まれない。


ぐいぐいアピールしていったほうが好印象だ。


「では、おぬしのキャンピングカーとやらを見物させてもらおう。ただ、具体的な日取りについては、こちらで決めさせてもらう。実のところ、まだおぬしへの疑いが晴れたわけではないからな」


まあ、そうだよね。


私はまだ、ランヴェル帝国からの工作員だと疑われている身。


工作員ではない、と、はっきり確認が取れるまでは、女王たちも技術提供を受けるかどうか決めかねるだろう。


「承知いたしました。では、ご連絡お待ちしています」


こうして女王との会合が終了した。

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