第4章136話:ふたたび王城へ


リズニス女王と初めて謁見したその日から。


私とアリスティは、王城周辺の貴族街にある、3階建ての屋敷に宿泊することになった。


この屋敷は、殿下が、王都に滞在しているときに使用するものらしい。


つまり殿下の屋敷だ。


さすがに王女が利用するだけあって、絢爛な居館である。


使用人は16人。


8人がメイド。


8人が執事。


それぞれのトップがメイド長、執事長である。


あと、護衛の騎士が5人滞在している。


私とアリスティは、3階の端の部屋二つに泊まることになった。


ご飯も美味しいし、お風呂も広いし……素晴らしい屋敷だ。






さて、3日後。


朝。


晴れ。


私は王城へと呼び出された。


アリスティとともに王城へ向かう。


謁見の間ではなく、王城の執務室で会合する。


執務机と、ソファー、テーブルがある個室。


部屋にいるのは、


ベスティーヌ女王、


ヒューネ様、


男官が2人、


女官が2人、


……である。


私たちはひざまずいて挨拶をしてから、立ち上がる。


ベスティーヌ女王が言った。


「おぬしを呼んだ理由は、ダファルダムの件じゃ」


「はい」


「まずルシェスの財産・利権について、我々に献上してもらおう。書類を用意したので、サインを」


「承知いたしました」


男官が書類をテーブルの上に置いた。


私は書類の内容を確認してから、サインをおこなった。


女王へ提出する。


女王がそれを確認してから、言った。


「よろしい。……では、ダファルダムを受け取るがよい」


女王が指示すると、女官の一人が、両手に杖を抱えて歩いてくる。


どうやら、この杖こそがダファルダムらしい。


先端に宝玉のついた杖。


ヒューネ様が説明する。


「杖を使って魔力を浴びせると、対象の情報が中空に表示されます。それが、ダファルダムの使い方です」


「なるほど。ご説明、ありがとうございます」


私はダファルダムを受け取り、アイテムバッグに入れた。


用は終わりかと思ったら、女王が言ってきた。


「おぬしに尋ねたいことがある」


そう前置きしてから、続ける。


「単刀直入に聞く。おぬしは、ランヴェル帝国の間者か?」


……本当に直球だね。


茶化す雰囲気はなく、ベスティーヌはじっと私に目を向けている。


ヒューネ様も、告げる。


「正直に申しますと、我々はあなたを、フレッド・フォン・ブランジェが差し向けた工作員であると考えています。答えてください。あなたは何者ですか?」


まるでこちらを見透かしてくるような瞳だ。


下手にごまかしたところで、どうせ調査されたらバレる。


私は正直に答えた。


「いいえ、間者でも工作員でもありません。これは殿下たちにも話したことですが……私はランヴェル帝国を追放された身です」


「……なんじゃと?」


「あと、フレッドは既に死んでいます」


「……!?」


二人は目を見開き、驚愕の色をあらわした。

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