第5章187話:滝の探知


しばらくしてから、私は言った。


「そうだ! ここでご飯を食べませんか?」


アリスティとニナがきょとんとした。


アリスティが確認してくる。


「えと……食事をするのですか?」


「はい。おにぎりとかいいですね。壮大な景色を眺めながら、握り飯を食べる……一度やってみたかったんですよね」


「はぁ」


アリスティが困惑まじりに相槌を打つ。


ニナが尋ねてきた。


「でも、周囲に魔物がいるかもしれませんよね。大丈夫でしょうか?」


「あー。確かに……それなら探知してみましょうか」


「探知?」


ニナが首をかしげた。


私はアイテムバッグから、【探知の指輪】を取り出した。


この指輪は、イグーニドラシェルたちを倒したときの戦利品で得たものだ。


指にはめる。


「これに魔力を送り込むと、半径1キロメートル以内の、人や魔物の存在を感知できます」


「す、すごい指輪ですね、それ」


ニナが驚く。


私は、指輪に魔力を送り込んだ。


すると、自分を中心にして、魔法のセンサーが広がっていくような感覚を覚えた。


そのセンサーの中に、人や魔物がいれば、感知できる。


結果……。


「ん……」


私がくぐもった声を漏らす。


ニナが尋ねた。


「どうだったんですか?」


「えっと、まず、あそこに鳥モンスターがいます」


私は対岸の崖を指差した。


ここからだと数百メートルほども距離があるので、小さいシルエットしか見えないのだが、鳥の群れがたむろしている。


アリスティが言った。


「確かに、鳥の魔物が数体いるようですね」


「はい。あと……滝つぼにも一匹、いるみたいなんですよね」


ニャリスの滝の、遥か300メートル下の滝つぼ。


そこに魔物の反応が1体だけあった。


しかも、動いていないのだ。


――――死んでいるわけではない。


死んだ魔物は、探知には引っかからなくなるからだ。


つまり、生存している。


そんな魔物が、滝つぼの、おそらく水の中に……1匹。


いや、怖くない?


だって滝つぼだよ?


推定300メートルも深度のある、穴の底……


なんで1匹だけいるの?


それはまるで、この地のヌシであると言わんばかりの、得体の知れぬ存在感。


めちゃくちゃ興味をそそられるんだけど……!


あの魔物……詳しく調べてみたいわ。


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