第5章186話:滝


キャンピングカーに乗る。


ノトシャークの街を出発した。


神官に教わった道筋を突き進む。


草原を越え。


山地を越え。


森に囲まれた街道を越え。


関所を越え。


……隣の領地へ。


途中の【フク村】という村で、ふたたび道を尋ねる。


この日は、さすがに暮れてきていたので、フク村で宿を取った。


翌日。


朝10時ごろ。


晴れ。


私たちはフク村を出発する。


キャンピングカーに乗って、草原を走る。


街道を離れて、道なき道をゆく。


人里離れた草原。


走る。


走る。


走る。


だんだんと、草の数が減ってくる。


むきだしの地面が増えてきた。


さらに、雑木林が前方に見えてきた。


一度キャンピングカーを止めて、雑木林を確認してみる。


木々の合間が広く、車一台なら余裕で通れそうだ。


(キャンピングカーでも通れそうですし、このまま突っ込みましょうか)


そう判断して、キャンピングカーを雑木林の中へ走らせた。


そのまま10分ほど走り続ける。


どこまでも雑木林が続いていたが、ようやく、終わりが見えた。


雑木林の柔らかな土が終わる。


足場が、固い岩のような地面に変わる。


そしてついに、キャンピングカーは、ニリャスの滝にたどり着いた。


私はキャンピングカーを下車する。


「わぁ……!」


目の前に広がる光景に、私は、驚愕の声を漏らしてしまった。


――――ニリャスの滝。


それは、私のイメージしていた滝とは大きく様相の異なるものだった。


眼前に広がっているのは、まさしく、巨大な河川たちの、莫大な水が、穴の底へと落ちていく光景だった。


半径200メートル、直径にして400メートル前後はあるのではないかと思われる、超巨大な穴。


穴の深さはどれぐらいあるのか?


崖の端に立って、のぞいてみるが、目視ではわかりづらい。


おそらく250メートル……


いや300メートルほどの深度があるのではないか。


その遥か下にある穴の底に向かって、滂沱ぼうだの水が、滝として流れ落ちてゆく。


滝の幅も、恐ろしく広い。


まるで水のカーテンである。


そんな水流のカーテンが、四つも五つも存在している。


あちこちから流れてきた複数の河川が、この巨大な穴を終着点としているためだ。


「すごいですね……これが、ニリャスの滝ですか」


アリスティが驚きに目を見開いている。


ニナも言った。


「私、こんな景色、見たことがありません」


轟々ごうごうと凄まじい音を立てながら、尋常ならざる水量が流れ落ちていく大瀑布だいばくふ


厳しくも美しい大自然の偉容いようが、ここにある。


これほど圧倒的なスケール感を前にしていると、ただただ、感動し、魅入みいってしまう。


私たち3人は、崖の上に立ち……


時間を忘れて、眼前の景色を眺めた。



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