第5章178話:ダリューン王国


翌日。


朝。


晴れ。


朝食後。


さっそく、私はニナに学問の講義をおこなうことにした。


「まずは、資料を渡しておきます」


私はニナにレジュメを渡した。


これは殿下に渡したものと同一のものだ。


ノートパソコンにレジュメのデータを入れてあるから、いくらでも印刷できるのだ。


「ありがとうございます!」


「では、早速、数学の講義を始めます」


まずは殿下のときと同様に、力学を理解するための基礎数学を教える。


1時間後。


ニナの飲み込みが速かったので、踏み込んだ内容を教えた。


1時間後。


「とりあえず、数学はここまでとしましょう」


「ふう……」


ニナはひと息ついた。


「どうでしたか? 今の講義は」


「相当難しいですね。これまで習ってきたものと全然違いました。でも……楽しかったです」


「それは結構なことです」


学問を楽しいと感じるなら上出来だ。


私は言った。


「休憩を挟んだら、工具を使ってものづくりのトレーニングをします。それが終わったらお昼にしましょう」


「はい!」






夕方。


キャンピングカーは草原を抜けて、山と森に挟まれた街路を走っていた。


長い山である。


途中で、オークの群れに囲まれた。


アリスティがキャンピングカーを降りて、瞬殺する。


「ア、アリスティ様って……とんでもなくお強いんですね」


と、ニナがビビりちらしていた。





さらに進んだところで、山沿いの坂道があらわれた。


この坂道の入り口脇にキャンピングカーを駐車させる。


「お嬢様」


アリスティが言ってきた。


「あちらに湖があるようです」


「おお、それは有難いですね」


私は答える。


外に出て、湖に近づいて、キャンピングカーを停めた。


ここで給水をする。


ニナが不思議そうに言った。


「水を補給するんですか」


「ええ。お風呂やキッチンの水は、このように給水した水を使っていますからね」


「なるほど……そうだったんですね」


給水が終わったので、のんびりと湖の近くで夜を過ごした。





それから翌日。


昼。


晴れ。


北東へと続く街路を走り続け、いよいよ国境を抜けた。


【ダリューン王国】へと入国する。


ダリューン王国は、目的地である【ニズヴィーン芸術国】の、途中にある国だ。


キャンピングカーのリビングで、私たち3人が座って雑談をする。


ニナが言う。


「もうリズニス王国を出たんですよね。なんだか信じられません」


ニナは、キャンピングカーの移動速度に、改めて驚嘆していた。


さらに、続けて言った。


「でも、ダリューン王国、ですか……私、来るの初めてですね」


私はうなずいて、言った。


「私も、です。どんな国なんでしょうね」


するとアリスティが、告げた。


「ダリューン王国は、水資源が豊富で、川が多く、穀物の輸出で成り立つ小国のようです。人口は30万人ほどらしいですね」


「へえ、詳しいですね。訪れたことがあるんですか?」


私が尋ねると、アリスティが首を横に振って否定の意を示す。


アリスティは、アイテムバッグから、一冊の書物を取り出した。


表紙に『ダリューン観光書』と記された本である。


本はものすごく薄くて、30ページぐらいで終わるようだ。


「題名の通り、ダリューン王国について書かれた本です。リズニス王国で売っていたので、購入しておきました」


さすがアリスティ。


出来るメイドだ……!


「これに書かれた内容によると、【ニリャスの滝】というのが、とても絶景だそうです」


ニリャス……


めちゃくちゃ言いづらい。


かみそうになるような語感の言葉である。


私は尋ねる。


「ふむ。それ以外には?」


「特にありません。牧歌的で、穏やかな国だと」


ないのか。


まあ、小国だからね。


滝という、観光名所が一つあるだけでも良いほうだろう。


私は言った。


「よし……じゃあ、とりあえず王都と、そのニリャスの滝とやらに行ってみましょうか」


するとアリスティが言う。


「ちなみに、王都よりも、ニリャスの滝のほうが近いみたいですね。先にそちらから巡ってみてはいかがでしょう?」


「なるほど。では、そうします!」


かくして、最初の行き先はニリャスの滝となった。


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