第5章176話:方針


アリスティが言った。


「聖泉水(せいせんすい)というのは、聞いたことがありますね」


「ほんとですか? どこで手に入るかわかりますか?」


私は尋ねる。


アリスティは難しい顔を浮かべる。


「うーん……記憶がうろ覚えなので、思い出したら、またご報告させていただきますね」


「はい。お願いします」


とにかく……


聖杖の必要素材を集める旅というのは、目標設定としては悪くない。


アーティファクトを作るのは錬金魔導師の夢だからね。


しばらくは、これを目標に定めることにしよう。


「というわけで、今回の旅は、諸国を漫遊しながら、聖杖づくりに必要な素材を集める旅にしたいと思います」


そう言ってから、私は補足する。


「もちろん、これは私の目標です。ニナの目標は、私と違うものになるでしょう。まあ、目標については、ニナ自身がよく考えて、決めてください。私は、それをサポートしますから」


「ありがとうございます。私は、やはりまず錬金魔法で食べていくための技術が欲しいです。そのために色々教えていただけると嬉しいです」


「わかりました。これから頑張っていきましょう」


「はい!」






アリスティに3人ぶんのオレンジジュースを入れてもらう。


テーブルにオレンジジュースが並べられる。


「で……」


私は羊皮紙とペンを取り出した。


そして言った。


「これから私は、師匠としてニナに、錬金魔法の教授をおこなっていくわけですが……まず、今後の方針について話したいと思います」


「方針?」


「はい。ニナにはこれから、2つのことを、してもらいたいと思っています」


私は指をまず一本立てながら、告げた。


「1つ目は、学問のお勉強。これは、私の錬金魔法の根幹ともなっている【科学】について、ニナに学んでいただきます」


「科学……」


物理、化学、生物、数学などの理数系科目を中心に、科学の基礎を叩きこんでいく予定だ。


最終的には、大学物理で扱う力学や電磁気学、バイオの知識ぐらいは習得してもらうことになるだろう。


次に、私は二本目の指を立てる。


「2つ目。錬金魔法の修行です。ただ、しばらくは錬金魔法ナシでDIYをしていただくことになります」


「でぃーあい……えっと?」


「まあ、要は、錬金魔法を使わずに、ものづくりをしてもらうということですね。工具と材料を使って、いろんなものを作ってもらい、そのなかで科学の実践経験を積んでもらうということです」


「なんだか面白そうですね!」


「以上、2つが、ニナにおこなっていただくことになります」


「わかりました。頑張ります!」


ニナが快活に返事をした。


やる気が溢れている様子だ。

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