第4章173話:称号とコイン


女王は言った。


「ところで、我々からも、おぬしに贈呈するものがある」


「……!」


なんだろう。


餞別でもいただけるのだろうか。


女王がヒューネ様に合図をする。


ヒューネ様は、アイテムバッグから、青色のコインを取り出した。


宝石で作られたコインのようで、美しい輝きを秘めている。


女王が、説明した。


「リズニス王国最高峰の錬金魔導師は【メリス・グラチェータ】と呼ぶ。おぬしにこの称号を与え、証明として、青の【グランコイン】を授ける。受け取るがよい」


「い、いいんですか? 私なんかが、そんな大層なものいただいて」


「何を言っておられるんですの?」


とシャーロット殿下が口を挟んだ。


「あなたほどの錬金魔導師なんて、大陸を見渡しても、二人といませんわよ」


すると、ユレイラさんが同意した。


「ふふ……そうですね。私も、長く生きてきましたが、エリーヌ殿ほどの錬金魔導師に出会ったのは初めてです」


「ドラル遺跡を解いた功績は、認めざるを得んからのう。それに、キャンピングカーや火縄銃も、凄まじいものがあった」


口々に、賞賛してくれる。


ヒューネ様が告げる。


「このグランコインの授与は、女王陛下、シャーロット殿下、私、ユレイラさん、それから、錬金魔法部のキーリントンさんやバンホーンさんなどの推薦があってのものです。誰かの一存で決めたものではありません」


キーリントンさんやバンホーンさんまで……


多くの人に認められて、コインの授与が決まったのだと実感する。


私は、感極まるものがあった。


シャーロット殿下が告げる。


「ふふ。勲章を授与する、と、約束しましたもの。これで、約束を果たすことができましたわね」


「……はい。殿下、ありがとうございます!」


ヒューネ様がグランコインを持って、近くまでやってくる。


そして、グランコインを手渡してきた。


私はそれを大事に受け取る。


アリスティが嬉しそうに言った。


「お嬢様。おめでとうございます」


「ありがとうございます、アリスティ」


私はグランコインを、アイテムバッグにそっとしまった。


それから、言った。


「では、私たちは、そろそろ出発しようと思います。今までお世話になりました」


深く、礼をする。


「うむ。達者でな」


「あ、わたくしは、見送りにいかせてもらいますわ」


かくして私は、シャーロット殿下とともに王城をあとにした。

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