第4章166話:ニナとともに出発


公爵邸の門前にやってくる。


私たちはそこで立ち止まる。


ニナさんが聞いてきた。


「あの……どちらへ向かうんですか?」


「とりあえず挨拶回りをしたいので、王都へ」


「なるほど。でしたら、公都で馬車を頼んできますね!」


歩き出そうとしたニナさん。


私はそれを制止する。


「ああ、その必要はありませんよ」


「え……?」


「私には、専用の"馬車"がありますので」


「専用の……?」


馬車とは、もちろんキャンピングカーのことである。


私は、アイテムバッグから、キャンピングカーを取り出した。


ニナさんが驚く。


「!?」


「この馬車は、キャンピングカーと言います。私の作った新型馬車です」


「し、新型馬車!!?」


「はい。私の旅は、このキャンピングカーに乗って行います。なので、馬車を頼む必要はありません」


「……」


この様子だと、どうやらダルネア公爵は、キャンピングカーのことまではニナさんに話していなかったようだね。


明らかにニナさんは、不意打ちを食らったように驚いている。


そのときダルネア公爵が口を開いた。


「ニナ」


「は、はい、ダルネア様」


「昨日も言ったことだけど、エリーヌ・ブランジェは、あたしが見てきた中でも、規格外の錬金魔導師よ。なんといったって、あたしを数学でうならせるほどだもの」


……数学でうならせたことと、錬金魔法は、関係あるような、ないような話ではあるが。


ダルネア公爵は続ける。


「まあ、この手の天才は、他人にモノを教えるのが下手なものだけど……エリーヌは例外的に、解説も上手いタイプよ。彼女についていけば、あなたの力もきっと向上すると思うわ。頑張りなさい」


「は、はい。頑張ります!」


ニナさんが、明るく返事をした。


「それじゃあ、エリーヌ。彼女のことをよろしくお願いね」


「はい。ダルネア公爵も、お元気で。またいずれ会いましょう」


「ええ、またね」


別れの挨拶を済ませたあと。


キャンピングカーのドアを開ける。


乗車を始めた。


「ではニナさん、どうぞ中へ」


「はい。お邪魔いたします……!」


ニナさんが車内にあがろうとする。


私は注意した。


「ああ、そこで靴を脱いでください。車内は土足厳禁ですから。脱いだ靴は、横の靴箱へ」


「は、はい……!」


ニナさんが靴を脱いだ。


指示通り、靴棚に収納する。


そしてニナさんがキャンピングカーへ乗車した。

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