第4章167話:ニナの驚き


ニナさんが乗車してくる。


すぐに、彼女は目を見開いた。


「え……!? こ、これが、馬車!?」


キャンピングカーのリビング。


ニナさんはきょろきょろと周囲を見回してみる。


「さきほどは新型馬車と紹介させていただきましたが、正確には、馬車ではありませんね。馬を使わないので」


「そういえば馬はいなかったですが……馬を使わずに走るんですか?」


「はい。ですから、私は、自動車と呼んでいます」


「自動車……」


「自動車は、本来なら人が運転して走る設計ですが、私の場合は、錬金ゴーレムを使って走らせています」


私は一拍置いた。


続けて、説明を始める。


「では、車内の案内と、機能の説明をしますね――――」


私は、ニナさんに、キャンピングカーの設備を解説していった。


キッチン。


お風呂。


トイレ。


それから運転席の様子も、見てもらう。


ニナさんは、面白いぐらいに、いちいち驚愕してくれる。


あらかた説明を終えたところで、ニナさんが感想を述べた。


「乗り物の中に、キッチンに、トイレって……す、凄すぎます……こんな馬車、見たことがありません」


私は言った。


「快適性を追及した車ということですね。では、説明はこれぐらいにして、発進しましょうか」


そしてゴーレムに命令する。


了解したゴーレムは、アクセルを踏んで発進を始めた。






ニナさんがリビングのテーブルに着く。


窓の外を眺めて、感嘆のため息をついている。


ニナさんがぽつりと漏らした。


「この馬車―――いえ、自動車、すごく速いですね。窓の外の景色も、あっという間に流れていって」


「馬車より速いですからね。やろうと思えばもっと加速できますよ。危ないのでやるつもりはないですが」


「馬が引いているわけでもないのに、そんなに速度が出るなんて不思議ですね。やっぱり、魔法で走らせているんですか?」


「いいえ。動力源は魔法ではありませんね」


「では……ほとんどカラクリ技術だけで、キャンピングカーの機能を成立させているということですか?」


「そうです。このキャンピングカーは私が持つ知識……科学、と呼ばれる学問の知識を使って、作り上げています」


「科学、ですか」


「はい。私がこれから、ニナさんに教えることになるのも科学です。その知識を錬金魔法と混ぜて使うのが、私の技術ですから」


「わ、私にできるでしょうか。こんな、凄い技術……」


ニナさんが、そう不安がった。

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