第4章162話:ダルネア公爵と再会


さらに月日が流れ、夏の終わりごろ。


私はそろそろ、次の旅に出ようと考え始めていた。


(近隣諸国を巡ってみたいね)


リズニス王国の周辺には、たくさんの国々が存在する。


それぞれに特色があるらしく、是非、観光してみたかった。


(殿下との教えあいについてもひと段落ついたしね)


ゼーリタ語については、基本的な単語、文法、発音は学んだ。


あとは独学でもなんとかなる。


一方、王女殿下も、基礎的な科学知識が身に付いた。


あとは私が作った資料を渡しておけば、しばらくは自力で上達することができるだろう。


(ただ、旅に出る前に……ダルネア公爵に会っておきたいな)


ダルネア公爵は、キャンピングカーに乗せてほしいと言っていたもんね。


その約束を果たしてから、リズニスを発つことにしよう。





数日後。


私はキャンピングカーを走らせて、王都を発った。


複数の領地を渡り、ベルーシィル領へ辿り着く。


ダルネア公爵と再会したのち、キャンピングカーに乗せた。


彼女は、キャンピングカーの快適さ、速さなどについて、いたく感激した。


ひとしきりドライブしたあと、ベルーシィル公都へ移動する。


公都の高級レストランに、飛び入りで入店した。


ダルネア公爵お気に入りの店なので、急な来店でもこころよく受け入れてくれた。


美しく、静かな個室で、ダルネア公爵と食事を行う。


アリスティの同席も許可してもらったので、3人で食卓を囲む。


メニューは、


ラタトゥイユ風・羊肉の野菜煮込み


ロールキャベツの胡椒風ポタージュ


赤ワイン


小麦のパン


氷浸けオレンジ


小魚のグリーンソース焼き


……である。


「ここの店、美味しいでしょ?」


ダルネア公爵が尋ねてくる。


「はい。特にこの小魚の焼き加減と、ソースのまろやかさが、良い具合に絡み合っていて、とても好きです」


「そうね、この小魚は絶品だと私も思うわ。……アリスティさんも、楽しんでくれているかしら?」


水を向けられたアリスティが答える。


「勿論でございます。野菜料理の新しい使い道を見ているようで、とても勉強になります」


確かに、野菜や果物系の料理が多い印象だ。


上手くたんぱく質と絡めている感じの献立。


ダルネア公爵が、微笑んで告げる。


「なるほど、使用人視点ね」


「私は、メイドでございますので」


ダルネア公爵が笑ってから、食事を進めていく。


優雅だ。


さすがに公爵様は違うね。


「ところで、エリーヌ。あなた、旅に出ると言っていたわね」


「はい」


「……それなら、一つ頼みたいことがあるのだけれど」


「頼みたいこと、ですか?」


私は首をかしげる。


ダルネア公爵は言った。


「実は、あたしのほうで面倒を見ている錬金魔導師の娘がいるんだけどね。その娘の師匠になってもらいたいのよ」


「え……私が、ですか? でも、これから私は旅に――――」


「その旅に、同行させてほしい……ということよ」


公爵の言葉に、私は思わず目を見開いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る