第4章161話:音響兵器


デモンストレーションが終わった後、私は、「話がある」と言って、女王陛下を呼び出していた。


個室に入る。


王城の応接室だ。


その場には、女王と、シャーロット殿下、アリスティの三人がいる。


私は尋ねた。


「陛下……火縄銃はいかがでしたでしょうか?」


「素晴らしい技術じゃった。アレは、相当使えるな」


「そう言っていただけて幸いです。ただ……」


と、前置きしてから言った。


「火縄銃は制圧力がありますが、イグーニドラシェルの欠落を埋めるほどの攻撃力はありませんよね」


「ん……まあ、そうじゃな」


たとえば火縄銃に六傑レベルの相手を殺傷する力はない。


ゆえに、私は言った。


「ですので、もう一つ、武器を授けたいと思います」


「ほう?」


「こちらでございます」


私は、アイテムバッグから音響兵器を取り出した。


音響指輪ではなく、デカイほうのやつだ。


……そう。


私は、ここで音響兵器を、女王に提供することにした。


「音響兵器という武器です。実は、イグーニドラシェルを戦闘不能に追い込んだのは、この兵器です」


「なんじゃと!?」


女王が身を乗り出した。


そのとき殿下が思い出したように尋ねてきた。


「あ、それって、あの音みたいな攻撃のことですの?」


「はい。イグーニドラシェル戦で使ったのは、この音響兵器を小型化したものですね」


女王が驚きながら聞いてくる。


「そんな強力な兵器を提供してもらえると? 本当に良いのか?」


無論、音響兵器の提供については正直悩んだし、今日をもって、音響兵器は私にとって秘中の秘ではなくなってしまうが……


新しい兵器の開発をおこなう予定なので、問題ない。


「構いません。これでイグーニドラシェルが抜けた穴は、完全に埋められるでしょう。……では、使い方を説明したいと思います。フィールドに移動していただいてもよろしいですか?」


「ああ。もちろんじゃ!」


私たちは、女王とともに都市を出て、ひと気のないフィールドに向かう。


そこで、女王に音響兵器の使い方をレクチャーした。


実際に魔物を相手に、女王に試用していただく。


この音響兵器は全方位ではなく単方位に音波を放つタイプ。


なので、きちんと敵に向かって使えば味方には当たらなくて済む。


ただ、もちろん、誤って味方に誤射してしまう可能性もある。


だから安全性に十分注意して使うよう、念を押した。


「素晴らしい兵器じゃな! 防御結界では防げず、威力も抜群に高い。しかもこの武器は、特定の個人にしか使えぬものではない。わらわでも使えるし、シャーロットでも使える。恐るべき兵器じゃ!」


女王は興奮した。


「このような兵器を開発するとは……やはりおぬしは、天賦の才を持つ錬金魔導師じゃな」


「えっと……ありがとうございます」


私は微笑んでそう答える。


音響兵器の提供が終わったので、私たちは王城へと帰還した。

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