第4章159話:技術提供
――――技術提供のデモンストレーションをする。
そう女王へ告知してから、一週間後。
王都の端にある軍の練兵場。
昼。
晴れ。
20名ほどの人々にお集まりいただいた。
女王。
ヒューネ様。
アリスティ。
ユレイラさん。
警護の騎士5人。
宮廷魔導師・錬金魔法部の魔導師5人。
軍の将軍や大隊長4人。
その他3人。
……などなどが、練兵場のグラウンドに居並ぶ。
今回、披露するのは、火縄銃と魔弾のデモンストレーションである。
私はまず、テーブルを設置してミスリル板を並べた。
そしてお集まりのみなさんに、告げた。
「本日はお忙しいところお集まりいただき、誠にありがとうございます。私は、錬金魔導師エリーヌ・ブランジェと申します」
前置きの自己紹介をしてから、続けて告げる。
「はじめにですが、今回のデモンストレーションでは、こちらのミスリル板を使用させていただきます。全てミスリルで作った金属板です。偽物のミスリルではないか、皆様、お確かめいただいてもよろしいでしょうか」
みんなが、ぞろぞろとテーブルを囲んで、ミスリル板を物色する。
口々に述べていく。
「確かに、この硬度はミスリルだ」
「純度はまあまあだな」
「この金属板をどうすると言うんだね」
私は答えた。
「このミスリル板を、このように重ねた上で、200メートル先の位置に並べます。不正がないことを証明するため、ヒューネ様……申し訳ありませんが、監視役としてご協力いただけないでしょうか」
「わかりました」
ヒューネ様がミスリル板をアイテムバッグに入れた。
そしてアリスティとともに、指定位置に移動する。
ヒューネ様がアリスティの指示で、ミスリル板を指定通りに並べていく。
先日と同じように、ミスリル板を固定台に乗せて並べる形だ。
ただし、先日と違い、銃のほうは固定しない。
代わりに【射撃補正の指輪】をつけた私が、普通に射撃する流れでやっていくつもりだ。
「それでは、準備が終わりましたので、始めさせていただきます」
と、私は挨拶をしてから告げる。
「これから披露させていただくのは、新型武器を使った狙撃のデモンストレーションです。なお確実に狙撃を成功させるため、【射撃補正の指輪】を使用させていただきますね」
射撃補正の指輪というレア装備を前にして、驚いたような声が上がった。
私はその声を聞き流しつつ、火縄銃を持って、全員に見せ付ける。
「これが、その新型武器―――魔法銃です。以後、火縄銃と呼ばせていただきます。この火縄銃を使って、あの距離にあるミスリル板を狙撃し、破壊します。正確にはミスリル板に弾を撃ちこんで、貫通させます。これが本日のデモンストレーションの内容でございます」
「馬鹿な!!?」
声を荒げた者がいた。
ヒゲをたくわえた軍の大隊長である。
彼は怒ったように告げた。
「ミスリルを狙撃で破壊するだと? 貴様はミスリルの硬度をわかって言っているのか!? 攻城兵器ですら、そう易々とは壊せん! 飛び道具ごときで壊せるわけがないだろう!」
すると同意したように将軍の男性が言った。
「現存の遠距離武器では、ミスリルを破壊するのは難しいな。弓使いが高い魔力を込めて放った矢なら、可能だろうが」
その点について、私は補足しておくことにした。
「初めに申しておきますが、今回私は、魔力を一切使いません」
「……なんだと?」
「魔力を持たない者でも、高威力の射撃が行える武器……それがこの、火縄銃です。作り方さえわかれば、錬金魔法部のほうで生産も可能だと思います」
魔力は、弾のほうに既に込めてある。
だから、魔力をもたない者でも使用できる。
ちなみに銃撃の反動については身体強化魔法があれば余裕で耐えられる。
が、今回、身体強化すらしなくても撃てることを、私は証明しようと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます