第4章157話:魔弾
夏のある日。
屋敷の庭に置いたキャンピングカー車内にて。
私は、リズニス王国に技術提供をするための準備をしていた。
イグーニドラシェルが抜けた穴を埋めるため、技術提供を行うというのは、女王たちとの約束である。
問題は、どんな技術を提供するか……だが。
「……イグーニドラシェルの代わりになるといえば、音響兵器しかないよね」
と、私は思った。
個人的に、私は音響兵器を提供してもいいと考えている。
音響兵器は最強の切り札ではあるが、万能ではない。
実際に、フレッドやイグーニドラシェルは完封こそできなかったものの、ある程度は耐えられていた。
だから、音響兵器にこだわり続ける必要はないのだ。
第二、第三の武器を開発して、複数の手札で戦えばいい。
「あとは無難に、銃かな……」
音響兵器は最強の武器ではあるが、イグーニドラシェルのような広範囲攻撃の代替とはならない。
そもそも音響兵器は武器としては使い勝手があまり良くないからね。
そこで、長距離攻撃ができる武器の提供を考えた。
となると銃しかないと思う。
(この世界には魔法があるから、近距離射程は魔法で済ませられる。だから提供するなら、射程距離が長めの鉄砲のほうが良いよね)
たとえば火縄銃の射程距離は400~500メートル。
ただし殺傷力を保てるのは、わずか50~100メートル程度。
それ以上となると威力が著しく落ちるので、使い物にはならない。
(300メートルぐらいでも殺傷力を維持できる鉄砲をプレゼントしようか)
アイディアとしては……
火縄銃をベースに魔法銃を作る。
魔弾と、魔弾の発砲に耐えられる銃を……だ。
(ただの火縄銃じゃ、防御結界は貫通できないだろうし……魔法銃というアイディアは必須だね)
異世界の戦場では皆、身体強化魔法や防御結界を使っている。
ただの銃では、大した威力にはならない。
(アンチマテリアルライフルですら、傭兵を攻撃したとき、結構耐えられたもんね……)
ルシェスの傭兵たちと交戦した際。
最初に狙撃した傭兵女性は一撃で倒せた。
あれは、狙撃されると思っていなかった傭兵女性が、防御結界を展開していなかったからだ。
つまり、Aランク傭兵の身体強化魔法ぐらいなら、アンチマテリアルライフルで貫通できることが証明されたわけである。
――――しかし、問題は二人目。
傭兵男性のほうだ。
彼は身体強化魔法だけでなく防御結果もきっちり展開していた。
そのため、アンチマテリアルライフルの威力はだいぶ減殺させられてしまった。
それでもダメージはあったものの、仕留めるのに六発も弾を使わされた。
(Aランクの傭兵でも六発必要ということは、デミラやイグーニドラシェルが相手だったら、アンチマテリアルライフルは効かなかっただろうね)
私には、いくつかの武器がある。
必ずしも、対物ライフルで仕留めなければいけないわけではない。
しかし、アンチマテリアルライフルは、私の最強の切り札の一つだ。
いざというときに通用しないでは意味がない。
1500メートル先から撃つことができて。
竜だろうと英雄だろうと一撃で殺せる、最強の武器であるために。
(作りますか、魔弾!)
私は、火縄銃、および、アンチマテリアルライフル用の魔弾の開発を決意した。
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