第4章147話:女王視点1


<女王視点>


さらに半月が経った。


夜。


王城の執務室。


女王ベスティーヌと、秘書ヒューネは、とある男性から報告を聞いていた。


彼は、女王がランヴェル帝国に放った"草"。


その隊長を務める男であり、帝国内で、ブランジェ家に関する情報の収集に当たっていた。


「……以上でございます」


男の報告が終わる。


彼の報告内容は以下だった。


・エリーヌは、ランヴェル帝国で汚職事件の犯人であるとして、国外追放を受けた。


・しかしどうやらそれは冤罪の可能性が高いようだ。


・真犯人はディリスであるとの疑いが濃厚であり、姉ローラが、ディリスを告発している。この件に関しては裁判中である。


・なお、この裁判は、貴族の機密情報に関わる裁判なので、一般公開はされていない。秘密裁判である。


・また、将軍フレッドは死んだとの認識が、帝国軍部に広がりつつある。


・死が確定したわけではないものの、フレッドとセラスが、連絡も取れずに行方不明になっているからである。


「そうか。ご苦労。短期間に、よくこれだけの情報を集めてくれた」


「もったいなきお言葉」


「後日、褒美を取らせる。下がってよいぞ」


「はっ」


男は静かに立ち去る。


彼が消えたのを見計らって、ヒューネが口を開いた。


「どうやらエリーヌ・ブランジェの語った言葉は、真実のようですね」


「ああ。国外追放はまことでありフレッドも死んでおる。ということは、エリーヌは我が国で破壊工作をしようとした工作員ではない」


「敵ではない……とするのであれば、やはり取り込む選択が正解でしょう」


「うむ。ドラル遺跡を攻略するほどの逸材、みすみす取り逃すのは惜しいな」


もしディリスが汚職の首謀者だとするのであれば。


エリーヌの国外追放は取り消される可能性もある。


そうなったら、エリーヌはランヴェル帝国へ帰国してしまうかもしれない。


「ただ、エリーヌはリズニス王城内での敵も多いです」


「第一王女派は、なかなか恨んでいるようじゃな」


「はい。仕方のない話かもしれませんが」


シャーロットがいずれ女王になると、信じ、支持してきたのが第一王女派である。


しかしシャーロットが永世巫女になったことで、女王の道は絶たれ……


第一王女派は事実上、崩壊してしまったのだ。


自然、第一王女派の者たちは、エリーヌに敵意を抱いている。


お前が余計をことをしなければ……と、怒りをくすぶらせているのだ。


このままでは、嫌がらせをしたり、直接的な暴力に出る可能性もなくはない。


「エリーヌにはアリスティという巨大な武力がある。第一王女派も、迂闊には手出しはできまい」


「そうですね」


「ただ、それでもエリーヌたちの状況が危ういのは事実。我々が、エリーヌを守ってやるべきじゃろうな」


「はい」


「あと……どうやってエリーヌを取り込んだらいいか、シャーロットに聞いてみるか」


エリーヌとの付き合いが一番長いシャーロットならば、良いアイディアをくれるかもしれない。


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