第4章144話:お買い物2


私たちは、ぶらぶらと街を歩く。


大通りには、たくさんの露店が出ている。


店主があちこちで呼び込みを行っていた。


私はふと気になった焼き鳥屋に注目する。


純獣族の店主である。


獣人族の多くは獣耳や尻尾が生えているだけで、見た目はほとんどが人間である。


しかし純獣族は、「人型の獣」というべきほど、獣としての容姿が濃く表れている。


目の前の店主は、クマのような毛並みを持った純獣族であった。


「へーいらっしゃい!」


「焼き鳥屋ですか、おいしそうですね。二本もらえますか?」


「はいよ!」


私は焼き鳥串を二本選んで購入する。


シンプルな塩焼きである。


焼き鳥の部位は不明だ。


串の一本をアリスティに渡した。


「ありがとうございます、お嬢様」


「どういたしまして。はふはふ、これ、なかなか熱いですね……でも、美味しいです!」


食べながら歩く。


どうやら焼き鳥の部位は、せせりだったようだ。


肉汁が結構閉じこもっており、塩がいい感じに効いていて美味しい。


「本当ですね。これ、とても美味しいです……っ」


アリスティも、満足げに食していた。


「アリスティ、よかったら食べ比べをしましょう」


「はい、構いませんよ」


アリスティから串を受け取って、食べる。


なるほど……アリスティの串はモモだ。


美味しい。


「……アリスティもどうぞ」


私の串をアリスティに渡す。


「ありがとうございます。はふ……ん。柔らかくて美味しいですねっ」


うーん、これは当たりの串屋だね。


私は満足げに串を食べながら、街路を歩いていく。


そのあと、野菜のジュースを買ったり、砂糖菓子を買ったりしながら、食べ歩きをする。


食べ物以外では、書物を購入したりした。





しばらく大通りを楽しんでから、横道に入る。


路地を歩いていくと、噴水広場が現れた。


なにやら歌声が聞こえてくる。


どうやら、歌の興行をしている者がいるらしい。


楽団というわけではなく、ソロで歌っているようだ。


私たちも近づいて、少し聞いていくことにした。


「~~~♪、~~~♪」


綺麗で伸びやかな歌声だ。


私は感想を述べた。


「良い歌ですね」


「はい。でも……お嬢様の歌のほうが、何倍も素敵です」


アリスティは真顔で断言した。


うん……


まあ、否定はしないよ。


エリーヌはマジで上手いからね……


前世の私は、歌ヘタクソだったけどさ。


「そういえば、アリスティが歌っているところ、あまり見たことがないですね。実は上手かったりしますか?」


「いえ……私は至って平凡ですね。お嬢様から比べると、天地の差があるほどです」


「そうなんですか。今度、歌ってみてもらえませんか? アリスティの歌、聞いてみたいです」


「う、うーん……恥ずかしいですね。でも、聞きたいと仰るなら、頑張ってみます」


「わぁ……約束ですよ!」


私は歓喜した。


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