第4章143話:お買い物


王女の屋敷に住み始めてから三週間ほどが経つ。


ここ数日。


雨が降っていた。


外出する気が起きなくて、部屋にこもった。


しとしと雨の降る音が、窓の外から聞こえてくる。


こんな日は、買い集めてきた書物をじっくりと読むに限る。


読んだのは詩集や物語集。


『騎士戦記』


『アルバート王国物語』


『湖の精霊・叙情詩』


『ニョルトル詩篇』


などなど。


日本の小説のように1冊200ページもあったりはしないので、サクサク読み進める。


結果、


この日だけで、17冊の本を読んだ。





そして、一週間ほどが経ち、雨雲が明けて。


晴れ渡る日。


昼。


私は、キャンピングカーの洗車をおこなうことにした。


王都そばの湖に出かける。


湖の水を一度、浄水機に入れて、清浄にし……


あとはゴーレムに洗車させた。


少し汚れが目立っていたキャンピングカーは、ピカピカになった。


ついでに機材の点検もおこなう。


こういうメンテナンスは、定期的にやっておかないとね。





さらに、その数日後。


この日は、アリスティと一緒に、王都城下町に買い物に行くことにした。


気分的に、一般庶民に混じって行動したかったので、平民用の衣服を着用した。


アリスティにも、いつものメイド服は使わないようにしてもらう。


二人で、街を歩く。


街は、パレードのときほどではないが、やはり活気で満ちている。


街娘。


行商人。


露店商人。


冒険者、魔法使い、吟遊詩人、衛兵。


獣人やエルフなど、人間とは違う種族まで。


多種多様な人々が混在し、街路を行き交っていた。


笑顔や明るい話し声で賑わっている。


繁栄している都市なのだということがよくわかる。


「買い物でしたら、申し付けてくだされば、私がやっておきましたのに」


隣を歩くアリスティが、そう述べた。


私は答える。


「まあまあ、二人でお買い物というのも、楽しくていいじゃないですか」


「それは否定はしませんが……」


メイドであるアリスティとしては、複雑な思いがあるのかもしれない。


「あと、リズニス王都は十分に観光したとは言いがたいですからね。まだまだ訪れてない場所もたくさんありますから、この機会に見て回りたいと思ったんです」


「なるほど。そういうことでしたら、これ以上野暮なことは申しません」


「ええ。アリスティも一緒に楽しみましょう」


「はい」


アリスティは微笑んで、同意してくれた。

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