第4章142話:アリスティとまったり


翌日。


夕方。


屋敷の私室。


私は、アリスティと二人でまったりと過ごしていた。


アリスティがベッドのふちに腰掛ける。


その横に、私が寝転んで、アリスティに膝枕をしてもらっていた。


「はぁ~……これはなごみますね」


「驚きました。お嬢様に、まさか膝枕を頼まれるとは」


「たまには甘えたくなる日もあるんですよ」


「ふふふ、そうですか。私は嬉しいので、いつでも構いませんけどね」


アリスティが私の髪を撫でてきた。


なごむ。


ふいに疑問に思ったことがあって、尋ねた。


「そういえばアリスティって、恋愛経験はどのくらいありますか?」


「実は、恋人は一人もいたことがありません」


「え!? アリスティって100年以上生きていますよね? 1度も恋愛したことないんですか?」


「はい。まあ、旅をしたり、戦争に明け暮れていましたから」


……そうなんだ。


意外だなぁ。


「そういえばアリスティの過去について、あまり聞いたことがありませんでしたね」


アリスティは軍人らしく、自分の過去をあまり話さない。


そして私も軍人らしく、他人の過去をあれこれ詮索しない。


ゆえに、今まで、アリスティの過去について深く聞いてこなかった。


「良かったら、どんな来歴なのか聞かせてもらえませんか?」


「私の過去ですか……うーん、では、私の生まれから話しましょうか」


「ぜひ聞きたいです」


アリスティは一拍置いてから、話す。


「私の生まれは、少し特殊な場所です」


「特殊な場所?」


「いわゆる絶海の孤島です。私はそこで、18~9年ほど暮らしました」


海のど真ん中に浮かぶ島。


その島では完全な自給自足が可能だったらしく、イモを主食に、魔物肉や野草などを食べて暮らしていたらしい。


「島には訓練場などもありましたので、よく格闘や戦闘の訓練をおこないました」


「それは魔物と戦うためですか?」


「はい。狩りをして、食材を確保していましたからね」


なかなか原始的な生き方である。


サバイバルだね。


でも、異世界では珍しくない話だ。


人里離れた秘境などで過ごす種族も、沢山いるだろうから。


「島を出てからはどうだったんですか?」


「最初は大陸の言語がわからなかったので、魔物狩りで生計を立てながら、語学の勉強に没頭しました。それが終わってからは、ずっと旅をしておりました。本当に色んな国があって、色んな文化があって……自分の世界が広がっていくような感覚でしたね」


「なるほど」


アリスティが懐かしむように語る。


軍人やメイドとしての側面が強いアリスティだったが、こうして話を聞いていると、根っこの部分は旅人なのだと感じる。





それから私とアリスティは、いろいろなことを話した。


まったりと時間が過ぎていった。

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