第3章129話:女王へ自己紹介


周囲にも動揺が広がる。


ベスティーヌ陛下もまた動揺している様子だったが、努めて冷静に、尋ねてきた。


「エリーヌ……と言ったな。いったいおぬしは何者じゃ? 答えよ」


こちらに水を向けられたので、自己紹介を行う。


「お初にお目にかかります、女王陛下。錬金魔導師、エリーヌ・ブランジェと申します。このたびは拝謁の栄に浴しまして、恐悦至極に存じます」


そのとき、女王秘書ヒューネ様が疑問の声を口にする。


「……エリーヌ・ブランジェ?」


そして尋ねてきた。


「ランヴェル帝国に同名の子爵令嬢がいたと記憶していますが、もしやあなたは、あのフレッド・フォン・ブランジェの妹君でございますか?」


「は、はい。よくご存知で」


私が肯定すると、さらに周囲に動揺が広がる。


フレッドの名前は有名だもんね。


しかし、それにしても、ヒューネ様に限っては、フレッドのみならず私の名前まで知っていた。


さすがは女王の右腕でありブレーン。


情報把握能力はピカイチのようである。


女王陛下は困惑したような目で尋ねてくる。


「ふむ……フレッドの妹御か。なにゆえリズニス王国におるのじゃ?」


「ただの観光です」


答えると、女王陛下はさらに質問を重ねてくる。


「観光で我が国にやって来て、シャーロットと出会い、ドラル遺跡を解いたと?」


「おっしゃる通りにございます。ルーナ大森林の湖にてシャーロット様の知己を得、その際、ドラル遺跡の件に関するご依頼を受けました」


「なるほどな」


女王陛下は納得したようだ。


さらに、女王は言った。


「それで……本当にドラルの術式を解いてしまったと。200年、誰も解けなかった術式を、おぬしが」


「はい。たまたま自分の知識が通用する術式でしたので。運が良かったです」


実際、謙遜ではなく、幸運に恵まれた部分は大きい。


原子の知識を問う暗号だったからすんなり解けただけだからね。


錬金魔法の高度な問題だったら、挫折していた可能性もあるだろう。


「そうか。本当に、解かれてしまったか……」


女王陛下は、どこかやるせない様子だった。


おそらく彼女は、シャーロット殿下が永世巫女になることに賛成していない。


しかし、解かれてしまった以上、巫女就任を認めるしかない。


それを惜しんでいるのだろう。


「お母様。実はもう二、三、重大な報告がございますわ」


シャーロット殿下はそのように申し出た。


女王陛下は首をかしげる。


「なんじゃ?」


「実は、遺跡を出た直後のことですが、ルシェスとイグーニドラシェルに襲撃を受けましたの。そして、我々はこれを迎えうち、討伐いたしました」


「なっ、なんじゃと!!?」


女王陛下はあまりの驚愕に、王座から立ち上がった。

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