第3章124話:ルシェス邸


ルシェスが死んだ場合……その財産は、遺族が受け取るのが自然だ。


遺産とは、普通、遺族のものなのだから。


今回、それを私たちが、慰謝料という形で横取りすることになるわけで……


ヴァンブルさんは、きっと異議申し立てをしてくるだろうね。


「ルシェスの家族はヴァンブルだけですわ。ゆえに、ヴァンブルを殺すことで、慰謝料の受け取りを妨害する者はいなくなります。ダファルダム入手計画は完成するというわけですわね」


「ふむふむ」


「ついでに、国の病理病根である、ケルフォード親子を一掃することもできますわ。できればヴァンブルからも慰謝料を貰いたいところですわね」


「おお……」


その慰謝料も、最終的には王家に献上される。


つまりルシェス・ヴァンブルの絶大な権益を、まるっと王家がゲットしちゃうわけで。


王家の権力が絶大化する!


さすが王女……いろいろあっても王家のためになるよう行動しているわけだ。


ついでに私もダファルダムをゲットできるから、みんな得してウィンウィンだな――――ケルフォード親子以外。


ただ、一つだけ確認しておかねば。


「あの……一応聞きますけど、ヴァンブルさんって悪い人なんですよね?」


「言ったように、国の病理病根ですわ」


そうか。


じゃあ、始末しても何も問題ないね。


「では参りますわよ。ルシェス邸へ」


「はい」


私たちはキャンピングカーに乗り込んだ。





こうして……


私たちはさっそくルシェス邸のあるケルフォード領へと向かうことになった。


遺跡から馬車で移動するなら数日かかる距離。


だが、キャンピングカーならば1日もかからないだろう。


この移動中に、私たちは作戦を決めた。


殿下は告げる。


「普通にルシェス邸を訪問しても、ヴァンブルは会ってはくれないでしょう。アポなしの訪問ですと、居留守を決め込まれる可能性が高いですわ」


「では、どうするんですか?」


「ルシェス邸では、貴族客の応対は執事長がおこなっていますから、まずは執事長を揺さぶります。そこからヴァンブルを引きずり出しましょう」


殿下がプランを語る。


私はそれを頭にインプットする。





草原を越え、山を越え……翌朝にはルシェス邸に到着する。


ルシェス邸の門前に立って、シャーロット殿下が門兵たちに言った。


「ごきげんよう。執事長を呼んできてもらえますかしら?」


「で、殿下!? はっ、ただいま呼んで参ります!」


門兵がいそいそと邸宅の中に入っていく。


しばし待つ。


ややあってから執事長が現れた。


「おはようございます、殿下。何か御用ですかな?」


シャーロット殿下が答えた。


「まずは紹介をさせていただきますわね。こちら、わたくしの親友であるエリーヌ・ブランジェです。実は、ルシェスが死んだので、昨日からエリーヌさんがこの屋敷の所有者と成りました」


一拍置いてから、続ける。


「つきましては屋敷を明け渡していただきたく存じますわ」


殿下の言葉に、執事長がぽかんとした。


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