第3章122話:理由
物言わぬ骸となるルシェス。
首がころころと転がり、周囲に血飛沫が散る。
容赦のない幕引きだった。
殺すと決めた相手を容赦なく殺せるのは、さすが王族というべきか。
私は尋ねる。
「お見事でした、殿下。……えっと、それで、ルシェスに請求書を書かせた理由をうかがってもいいですか?」
「はい」
シャーロット殿下が、説明を始める。
「ルシェスは、ああ見えて、政財界の橋渡しを行う重鎮でしたの。ですから彼は、凄まじい財力と権力を有していました」
「ふむふむ」
「そんな彼の利権が、たった今、エリーヌさんのものになったのですわ」
「ふむ……」
「いわば、エリーヌさんはルシェスに代わって、現在、政財界の根幹となる利権を所持していることになりますわ。この紙切れ一枚によって」
シャーロット殿下が、手に持った請求書をヒラヒラさせた。
私は言う。
「それはわかりました。でも、さきほども言ったように、私は利権など欲してはおりませんが……」
「わたくしも、エリーヌさんに、単にルシェスの財産や利権を授けたいと思っているわけではありません。私があなたに授けたいのは、別の物ですわ」
「別の物?」
「あなたは、ダファルダムを欲しておられましたでしょう?」
鑑定魔導具――――ダファルダム。
一度、報酬として殿下にねだったもの。
しかし、国宝であるからと断られてしまった。
私も、さすがに国宝を要求するのは無理だと諦めていた。
だが、シャーロット殿下が言った。
「ルシェスの利権を引き換えにすれば、ダファルダムを獲得することができますわ」
……!
そうか!
私はようやく話を理解する。
ルシェスの持っていた利権が、リズニス王国において絶大な権益だとするならば。
ルシェス亡き現在、リズニス王家は、その権益をなんとしてでも手に入れようとする。
もしも王家以外の者の手に渡ったりすれば……
相手によっては、一気に王家が逆転され、追い落とされることも有り得るのだから。
「そう。王家は、この請求書に書かれた権利を絶対に手に入れようとします。ルシェスの財産や利権を献上するよう、エリーヌさんに働きかけるでしょう。そのときにエリーヌさんは、交換条件として、ダファルダムを要求すればいいのですわ」
つまり、ルシェスの利権は、ダファルダムと釣り合うということ。
……なるほど。
だからシャーロット殿下は、ルシェスに請求書を書かせたのか。
「確かにその方法なら、ダファルダムを得られますね!」
私は納得する。
死んだルシェスには悪いが……
ナイス機転だよ、王女様!
これで鑑定魔導具がゲットできる。
私は歓喜した。
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