第3章121話:決着


シャーロット殿下は私に言ってくる。


「今のうちに……エリーヌさん。テーブルと、紙、それからペンを用意していただけませんか?」


「あ、はい」


私はアイテムバッグから、テーブルと羊皮紙、羽根ペンなどを取り出した。


シャーロット殿下がテーブルの椅子に座る。


彼女は羊皮紙にペンを走らせ、なにやら書き物を始める。


請求書を作っているようだ。


一方、ルシェスのほうはというと。


しこたま殴られたあと、ユレイラさんに踏みつけられていた。


「……さて、言うことを聞く気になりましたか?」


「くそ、くそ……ど、どうして僕がこんな目に……」


ルシェスがぼろぼろと泣いていた。


そんなルシェスの首根っこをつかんで、ユレイラさんが起き上がらせた。


シャーロット殿下が言った。


「さあ、慰謝料の請求書ができましたので、ルシェス。対面に座っていただけますか?」


そのとき、私は請求書を横から眺める。


内容を要約すると、『殺人未遂の慰謝料としてルシェス・ケルフォードの財産や利権を全てエリーヌ・ブランジェに譲渡する。なお、犯罪物は譲渡しない』といったことが記されている。


これにルシェスがサインをすれば、約定が成立する。


「ほら、座りなさい!」


「くっ……!」


ユレイラさんが、ルシェスをテーブルの椅子に無理やり座らせる。


逃げられないように、ルシェスのすぐ後ろに、ユレイラさんが仁王立ちした。


シャーロット殿下が言った。


「では、一筆お願いいたしますわ」


殿下が請求書をルシェスに向けて差し出す。


ルシェスは嫌そうに渋っていた。


しかしユレイラさんが、彼の背後から、両肩に手を置いて、脅すように言った。


「早く書いてください」


「ひっ」


ルシェスは心折れて、ビクビクしながら請求書にサインした。


シャーロット殿下が確認して、満足げにうなずく。


「確かにサインを確認しました。どうもありがとうございます。これでルシェスの全財産はエリーヌさんのものですわ」


「くっ、ううっ……」


ルシェスは泣いていた。


「もうテーブルは片付けてもらって構いませんわ」


「あ、はい」


私はアイテムバッグにテーブルを片付けた。


シャーロット殿下がユレイラさんに命ずる。


「ではユレイラ。用は済みましたので、ルシェスを始末してください」


「はっ」


ユレイラさんが御意を示す。


ルシェスが青ざめた。


「ひっ……!? ま、待ってくれ! 話を、話をさせ――――」


ルシェスが言い終わる前に、ユレイラさんが彼の首をハネた。


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