第3章119話:制圧
私は思う。
(アリスティの間合いに入ったら終わりです。近接戦において、アリスティの右に出るものはいません)
唯一、アリスティの脅威となりえたのは、やはりイグーニドラシェルである。
彼女の超範囲魔法は、間合いの外から一方的に相手を攻撃できるものだ。
近接主体のアリスティにとって天敵といえる。
さっさと排除しておいて良かった。
さて、樹木に倒れたデミラはもちろん、起き上がることはない。
おそらく絶命しているだろう。
続いてアリスティは、近くにいた傭兵の男に近づく。
「っ!?」
アリスティのパンチが炸裂する。
男は呆気なく肉塊に変わった。
これで2人撃沈だ。
残る傭兵は4人。
「うわ、うわああああっ!!?」
傭兵のうちの一人が逃亡を始めた。
それに続いて、他の傭兵たちも我先へと逃げ始める。
「あ、こ、コラッ!! 逃げるな君たち!」
ルシェスは制止する。
だが傭兵たちが叫ぶ。
「馬鹿が! あんなのに勝てるわけねーだろ!」
「テメエだけで戦ってろ!!」
誰もルシェスの指示には従わない。
アリスティは私に言ってきた。
「申し訳ありません。ちょっと脅かしすぎたようです。逃げた者は全て始末します」
「私も手伝います。あの傭兵たちには"兵器"を見られてますからね。生かして帰すつもりはありませんよ」
私はアイテムバッグからアンチマテリアルライフルを取り出した。
忘れず【射撃補正の指輪】を装着。
さらにアリスティに命じる。
「アリスティは森に逃げた2人を追ってください。私は、草原に逃げた2人を殺ります」
「承知いたしました」
アリスティは言ってから、森へと駆けていった。
私はアンチマテリアルライフルを構える。
【射撃補正の指輪】があるおかげで、距離、風向き、相手の動きなども含めた、完璧な弾道予測が可能である。
一般的にアンチマテリアルライフルは伏せて撃つものだが、今回は立射で狙撃をおこなうことにする。
立射は反動が大きいが、身体強化魔法を使っておけば肩や手首への衝撃はほとんど防げるだろう。
草原に逃げた傭兵たちは、視界の奥に見える雑木林に向かって、一目散に走っていた。
あの雑木林に逃げ込まれたら厄介だ。
その前に撃ち殺してしまおう。
私は、距離的に近い位置を走っていた傭兵女性に発砲した。
「ぎげぁっ!?」
傭兵女性の背中に、対物ライフルの弾丸が直撃する。
傭兵女性は防御結界を張ってはいなかった。
あまりに突然の狙撃で、結界を展開する暇がなかったのだろう。
しかし身体強化魔法は行使していたはずだ。
戦場では、身体強化魔法を使って戦ったり、移動したりするのは、定石だからである。
それでも――――
アンチマテリアルライフルの並外れた威力が、傭兵女性に致命傷を負わせる。
背骨を撃ち抜かれた彼女が、派手にすっ転んだのち、動かなくなった。
「な、なんですの。あの武器は!?」
シャーロット殿下が驚愕する。
ユレイラさんも目を見開いていた。
「武器の威力も尋常ではありませんが、あの射撃力。動いている的にあれほど正確に当てるなんて……」
まあ、射撃の腕に関しては、指輪のおかげなんだけどね。
と、そのとき。
「……!?」
ルシェスが、ひそかに逃亡を始めた。
もはや勝ち目はないと悟ったのだろう。
しかし。
「待ちなさい!」
ユレイラさんがすかさず追いかける。
彼女は近衛隊長。
よもやルシェスを取り逃がすことなど無いはずだ。
私は、射撃に集中することにした。
最後の一人。
傭兵男性。
彼は草原を走り続けていたが、もはやへっぴり腰になっていた。
私はその背中に、容赦なく対物ライフルの弾丸を叩き込んだ。
「ぐはっ!!!?」
一撃では殺せなかった。
どうやら直前で防御結界を張っていたらしい。
ただし、ダメージを完全には殺せなかったようで、苦しそうに膝をついている。
私はすかさず、次弾を発砲した。
さらに三発、四発、五発……と撃ち、ダメージを与え続ける。
次第に傭兵男性が弱って、防御結界を展開できなくなってきたところで、トドメの六発目を放った。
結果、傭兵男性を見事撃ち抜き、絶命させることに成功した。
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