第3章102話:奥の通路



実は、原子番号は「原子を発見された順番に並べたものだ」と思っている人もいるのだが、違う。


原子番号とは、原子核に含まれる陽子数をあらわしている。


(でも、ドラル・サヴローヴェンは原子や陽子の存在に自力で辿り着いたんでしょうか?)


それとも、やはり転生者だった?


いずれにせよ、宝物庫の術式が200年も解かれなかった理由も、これでわかった。


原子の存在を知らなければ、解読なんて出来ようはずがないからだ。


そして原子を、暗号の解読要素にしたということは……


ドラル・サヴローヴェンは、原子の存在を知る者に、解読してもらいたかったということでもあろう。


「エリーヌ殿は、凄まじい知識をお持ちですね。そしてその叡智で、まさか本当に、200年の謎を解き明かしてしまうとは」


ユレイラさんが言った。


シャーロット殿下も同意する。


「そうですわね。エリーヌさんは、錬金史に名を残す偉業を成し遂げましたわ。王城に戻ったら、国家最高の勲章を授与することをお約束いたします」


わぁ……それは光栄だ。


「リズニス最高の勲章授与……おめでとうございます、お嬢様!」


アリスティが、我が事のように喜んで賞賛してくる。


「ありがとうございます、アリスティ。……さて、そろそろ奥にいきませんか? 宝物庫に何が眠っているのか、気になりますし」


「そうですわね」


シャーロット殿下も同意する。


私たちは四人で、通路の奥へと歩き始めた。






通路は、ときどき角を曲がったりすることはあれど、一本道ではあった。


1分ほど歩き続ける。


やがて、行き止まりにたどり着いた。


扉が一つある。


鍵はかかっていないようで、ユレイラさんが、それを開けた。


「……」


罠がないか、警戒しながらユレイラさんが中へと入っていく。


私たちもそれに続いて、扉の向こうへ入室した。

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