第3章101話:解読



私が文字を打ち込むと……


「あ……」


宝物庫の扉が、消失した。


向こうへと続く通路が現れている。


暗号、解読成功のようだ。


「扉が……消えましたわ。もしかして、これって」


「ええ。暗号が解かれたんですよ、シャーロット様!」


ユレイラさんが興奮したようにはしゃいでいた。


アリスティが言ってくる。


「さ、さすがお嬢様です……! 200年も解けなかった暗号なんですよね。まさか、こんな一瞬で解いてしまうなんて」


「あはは。ありがとうございます」


ほんとに原子番号で解けてしまうとは……


手記や遺稿は必要なかったな。


まあ、私はそれらをまだ読んでないので、本当に解読のヒントが書かれていたかはわからないんだけどね。


「ど、どうやって解いたんですの!? エリーヌさん!」


シャーロット殿下がまるで掴みかからんばかりの勢いで尋ねてきた。


「ああ……えっと、説明が難しいですね」


私は当惑しながら、答える。


暗号文が、錬金素材ではなく、原子番号を指していた。


その番号こそが暗号の答えになっていたということを。


「げ、げんし番号……?」


シャーロット殿下が首をかしげた。


私はなんとか説明を試みる。


「原子とは、この世の物質の最小単位のことです。これ以上分割することのできない極小の粒子のことをいいます」


「は、はぁ……」


「で、原子の中心に存在する原子核には、陽子と呼ばれる粒子が含まれます」


「ふむ……」


「……陽子は、原子によって数が異なります。たとえば鉄の場合は26個、鉛の場合は82個、水銀には80個、存在します」


シャーロット殿下とユレイラさんは、難しい顔をしていた。


さすがにちんぷんかんぷんだったか……


と思いきや、殿下はしっかりと質問を返してくる。


「なるほど。つまり、その原子核というものに含まれる陽子の数が、暗号の答えだったということですの?」


「はい。その通りです」


私は肯定した。

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