第3章98話:遺跡に到着


キャンピングカーを発進する。


街道を走りはじめる。


テーブルに着いたシャーロット殿下が言った。


「まさか、本当にダルネア公爵から遺稿を手に入れることができようとは。さすがはエリーヌさんですわね」


「いえいえ。たまたま得意分野の知識が通用しただけですよ」


私は苦笑する。


シャーロット殿下が告げる。


「この件に関しても、別途報酬を用意させていただきますわ。どんなものが欲しいか、考えておいてくださいまし」


「あ……それについてなんですが」


今回の依頼の報酬について、私は希望があった。


「鑑定魔導具が欲しいと思っているのですが、持っていたりしませんか?」


鑑定魔導具。


対象を分析する鑑定魔法を封じ込めた魔導具である。


―――錬金魔法において、最も重要なことは、素材を理解することである。


素材の理解なくして、ハイレベルなアイテム錬成は実現できない。


しかし、この世には未知の素材が溢れている。


素材の名称さえ不明なものも存在する。


鑑定魔導具は、そんな素材への理解をサポートしてくれるものだ。


錬金魔導師として、鑑定魔導具は、是非とも入手したい代物である。


ただし、一般に出回っている魔導具ではない。


一説では、伝説の魔導具とも呼ばれていたりするぐらいだ。


だが、王族ならば、あるいは所持していたりしないかと思ったので、聞いてみることにしたのだ。


シャーロット殿下は、難しい顔をしながら、答えた。


「一応、鑑定魔導具は、王家が一つ所有しておりますわ」


「本当ですか!?」


「ええ。ダファルダムという名の鑑定魔導具です。ただ国宝認定を受けているので、お譲りすることは難しいですわね。お母様の許可がないと」


「そうですか……」


国宝となると、確かに譲渡してもらうことは不可能に近いだろう。


女王の許可を取り付けるのも難しそうである。


「うーん……鑑定魔導具は無理そうですね。何か別の報酬を考えます」


「はい。決まったら、いつでもおっしゃってくださいましね」






さて、ベールシィル領を抜け、1日かけて複数の領地をまたいだ。


草原。


山地。


森に囲まれた街道などを抜けて、やがて目的地――――【ダゼレット領】に到着する。


ドラル遺跡はこの領地の南部に存在するようだ。


キャンピングカーを快速で走らせる。


やがて、1時間後。


私たちは、ドラル遺跡に辿り着いた。


街道などは整備されてない、人里離れた草原の中。


広大な森の手前。


そこに、古びた遺跡があった。


私たちはキャンピングカーを下車する。


アイテムバッグに車を収納した。


遺跡では何があるかわからないので、念のため【音響指輪】を右手の人差し指にはめておく。


「あれが、ドラル遺跡ですわ」


遺跡の入り口には、不思議な文様が刻まれた石扉がある。


そこに近づこうとしたとき、アリスティがふいに口を開いた。


「お嬢様」


「ん? なんですか?」


アリスティは、険しい顔つきで周囲を見回していた。


「いえ……なんだか、この場所は、他とは魔力の流れが違うような気がします」


「そうなんですか?」


私も魔力の流れを読み取る訓練は受けてきたつもりだが、特に異変は感じない。


アリスティほど優れた感覚を持っていないとわからない何かがあるのだろう。


彼女は言った。


「はい。何があるかわかりませんので、どうか、私のそばを離れないでくださいますよう、お願いします」


「わかりました。いざというときは頼みますね」


そう告げると、アリスティはうなずいた。


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