第3章88話:問題


シャーロット殿下は言う。


「それでわたくしたちは、あちこちにかけあって数学の難問を探しましたわ。しかし、30問ほど用意したのですが、それらは全て、ダルネア嬢に解かれてしまいました」


ユレイラさんが思い出したように補足する。


「ちらっと問題文を見ただけで解かれましたね。あれは本当に驚きました」


「今回も10問ほど新たに問題を用意しましたが……果たしてダルネア嬢が苦戦するような問題かは、不安ですわ」


不安、と言いつつ、実際は無理だと諦めているような雰囲気だ。


私は言った。


「ちょっとその問題というのを見せてもらっても?」


「え? ええ、構いませんわよ」


シャーロット殿下は、アイテムバッグから羊皮紙を取り出した。


それをテーブルの上に提示してくる。


私はざっと眺めた。


「なるほど……」


ユレイラさんが尋ねてきた。


「どうでしょう? 一流の錬金魔導師から見ても、難しいでしょうか?」


「いえ、簡単ですね」


「え!?」


ユレイラさんが驚いた声をあげる。


私は言った。


「たとえば、1問目……『3の100乗は何桁か?』という問題。これは48桁ですね」


するとシャーロット殿下が驚愕の声を上げた。


「なっ……そんな一瞬で!? どうしてわかったんですの!?」


「まあ、桁数の計算は解き方がありますからね。それで2問目の答えは、64通りでしょう」


「せ、正解です……」


ユレイラさんが驚きつつも、そう告げた。


私は正直に申し上げる。


「他の問題も、解法はあっさり思いつきます。これでは、天才を黙らせることは難しいでしょう」


ユレイラさんが言った。


「おみそれしました。エリーヌ殿は、数学においても格別の才能をお持ちのようですね」


シャーロット殿下も言う。


「まさかここにも天才がいたとは……驚きですわ」


「いえ、私は天才ではないですが……」


私ごときを数学の天才と呼んでしまうのは、真の天才に失礼だろう。


理系分野は、賢い人は本当にどこまでも賢い。


私レベルでイキっていると痛い目を見る。


「しかし、では、これらの問題ではダメですか……」


ユレイラさんがぽつりと言った。


シャーロット殿下も意気消沈する。


一縷の望みをかけていた問題が、あっさり解かれてしまったのだから、そうなるか。


私は言った。


「大丈夫です。代わりにとっておきの問題を、私は知っていますから」


「え……?」


シャーロット殿下が顔を上げた。


私はにやりと笑った。


「殿下。そのダルネア嬢という方は、私に任せてもらえませんか?」


「え、ええ……それは、構いませんが」


シャーロット殿下が困惑しながらも了承する。


ふふふ、天才ダルネア嬢……待っているがいい。


私が、"あの問題"をぶつけてやる。

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