第3章84話:王都の宿



そのあと、殿下たちと別れ、私とアリスティは王都を軽く観光した。


錬金素材と食材をひたすら買い集める。


王都には豊富な素材が集まっている。


さすがリズニス王国はそこそこの大国なだけある。


お金には余裕があるので、買いたいものは片っ端から買いまくることにした。


荷物になるので、アイテムバッグを新たに購入しながらである。


そうして、数時間後。


殿下たちは王城から帰ってきた。


大通りで合流する。


日が暮れ始めていた。


「宝物殿に入る手続きに、時間を取ってしまいましたわ」


どうやら王女といえど、宝物殿には簡単に立ち入らせてもらえないらしい。


「待たせてしまい、申し訳ありませんでした」


「いいえ。たくさん観光ができたので、楽しかったです」


かなり色んなものを買えたしね。


シャーロット殿下は言った。


「キャンピングカーに戻りますか?」


「それなんですが、せっかくですし、王都で宿を取ろうかと思います」


たまにはキャンピングカー以外の場所で泊まるのも悪くない。


旅先の宿で泊まるのだって、キャンピングカー旅の楽しみの一つだ。


「なるほど。でしたら、おすすめの宿を紹介いたしますわ。わたくしが懇意にしている女店主が経営している宿ですが」


「本当ですか? それはありがたいです。では、お願いしてもよろしいですか?」


「はい。場所は、こちらですわ」


シャーロット殿下が歩き出した。


大通りから少し横道に入ったところ。


明らかに貴族街とおぼしき綺麗な町並みが広がっていた。


そこを殿下が、先導して歩く。


シャーロット殿下が懇意にしている宿、か。


きっと高級宿なんだろうな。


……と思っていたら、やはり高級宿だった。


とても瀟洒な宿であり、中に入ると、スイートホテルのようなロビーが広がった。


ロビーの受付嬢は、殿下の顔を見るなり表情を引き締めた。


シャーロット殿下は言った。


「四名の宿泊手続きをお願いしたいですわ」


「か、かしこまりましたっ!」


受付嬢は手続きを行う。


なんと受付嬢は、私たちに最上階の部屋を融通してくれることになった。


シャーロット殿下の威光は本当に巨大だね。


私が通された部屋は、まさしくホテルの一室。


ベッドとサイドテーブル、椅子、丸テーブルなどが置かれた部屋だ。


床には赤いじゅうたんが敷き詰められている。


ふと窓際に立って、外の景色を眺める。


夕暮れの王都。


空はオレンジ色に染まり、雲は銀色に染まってたなびき……


城壁の向こうに沈んでいく夕陽が眺められる。


美しい景色だ。


「さすが王都は綺麗だね……」


リズニス王都は、夕暮れの景色も、夜景も、とても美しいものだと伝えられている。


吟遊詩人が詩にすることもあるほどだ。


私はその眺望を堪能してから、おもむろにベッドに寝転んだ。


そして食事の時間まで、まったりと過ごすことにした。

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