第3章81話:英雄


キャンピングカーをアイテムバッグに片付ける。


私は言った。


「それでは、王都に入りましょうか」


シャーロット殿下たちはうなずく。


私たち四人は、徒歩で、王都に向かう。


王都門前まで来ると、喧騒が聞こえてくる。


楽団の音楽なども聴こえた。


王都というのは賑やかなものであるが、この盛況ぶりは、平常のものではないように感じる。


ユレイラさんがぽつりとつぶやいた。


「何かあったのでしょうか」


シャーロット殿下が門の向こうを見つめながら、推測を述べる。


「どうやら凱旋のパレードのようですわね。今月にパレードの予定なんてありませんでしたから、急遽、執り行われたものでしょうか」


「凱旋というと……あ」


ユレイラさんが何かに気づいたように声を漏らす。


そうして言った。


「英雄の凱旋でしょう! 確か、イグーニドラシェルが地竜の討伐に向かっていたはずです」


「ああ……きっとそうですわね」


イグーニドラシェル。


聞いたことがあるような、無いような名前だ。


そのとき、アリスティが説明した。


「イグーニドラシェル。リズニス王国の女英雄であり、【選ばれし六傑】の一人ですね」


ああ……


そうか。リズニス王国の英雄だったか。


有名人だったので、名前を聞いたことがあったのを思い出した。


しかし、それにしても……。


「はじめて聞いたときから思ってたのですが、その【選ばれし六傑】って呼称、笑えますよね。四天王的な? 私の兄上もそうだったとか……ふふ」


くすくす笑うと、アリスティが困った様子で抗議した。


「……あの、一応私もその一人なので、笑わないでいただけると嬉しいのですが」


「ごめんなさい、ふふふっ」


こぼれる笑いを抑えきれないでいると、アリスティが頬を膨らませた。


私はこほんと咳払いしてから言った。


「で……六傑の英雄さんが地竜を討伐したと。その祝勝パレードが行われているということですか?」


「そのようですわね。まあ、中に入ってみればわかりますわ」


シャーロット殿下が言ってから、検問へと向かった。


当たり前だが、殿下は顔パスである。


検問の衛兵たちは、シャーロット殿下の姿を見るなり、膝をついて畏敬の念を示した。


その際、衛兵たちに王都の催しについて尋ねる。


衛兵によると、やはりイグーニドラシェルのパレードが行われているようだった。


聞きたいことは聞けたので、私たちは検問を抜けて、王都に入場する。

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