第3章80話:王都前


<エリーヌ視点>


その夜、シャーロット殿下たちはキャンピングカーに宿泊した。


料理、お風呂、ベッドでの寝泊まりなど……とてもご満悦いただけたようだ。


翌日。


朝。


晴れ。


私たちは、アランベイの街に向かった。


王女にとってはお忍びとなるので、四人で仮面をかぶって街に入ることにした。


赤い屋根の立ち並ぶ、人口4000人ほどの平凡な街。


市場が出ていたので、食材と素材を買い集める。


それが終わると、キャンピングカーに戻った。


待機すること数時間。


昼を過ぎたあたりで、ようやく護衛隊が到着した。


殿下とユレイラさんが、キャンピングカーの前で、護衛隊の女隊長と話す。


話が終わると、殿下たちはキャンピングカーに戻ってきた。


シャーロット殿下が言う。


「このままわたくしたちは、王都へと向かいましょう。護衛隊とは、ここで別れますわ」


私が尋ねた。


「よろしいのですか?」


「ええ。構いませんわ。"どうせキャンピングカーについていけないから、先に行って欲しい"……といったようなことを、女隊長に言われましたの」


なるほど。


まあ、そうなるか。


今の状態だと、私たちのキャンピングカーは、いちいち護衛隊のために待たされることになる。


女隊長からすると、殿下を何度も待たせるのは恐れ多いという結論に達したのだろう。


私は言った。


「わかりました。では早速出発してもよろしいですね?」


「ええ。お願いいたしますわ」


「了解です」


告げてから、私はゴーレムへと発進命令を出しに行く。


そうして、私たちはアランベイの街をあとにした。






キャンピングカーで街道を走る。


草原を、森を、山道を走破し、


複数の街を素通りして、ドゥーバン伯爵領を出る。


その後、複数の領をまたぎ、リズニス王国内を快速で走り続けた。


二日後。


私たちは、王都へと辿り着いた。


王都の城壁を眺められる位置。


時刻は朝10時ごろであり、天気は晴れだった。


王都前・街路沿いの草原の上に駐車した私たちは、キャンピングカーを降りた。


シャーロット殿下は言った。


「もう驚き慣れてしまいましたが……キャンピングカーの移動速度は、本当に呆れるほどですわね。あの湖からわずか数日で、王都まで来てしまうなんて」


ユレイラさんが同意する。


「馬車だと10日はかかりますからね。アランベイで待機した時間をさっぴけば、実質2日で移動したことになるでしょうか。恐るべき速さですね」


この二人は、特にキャンピングカーの「速度」に注目することが多かった。


以前にユレイラさんがちらっと言っていたが、物資輸送や情報伝達の速度が変わるだけで、国のありようも一変する。


彼女たちがキャンピングカー、ないし、自動車に大きな可能性を見出すのは当然だろう。



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