第3章77話:提案


「こんなに速く移動できるなら、明日には王都に着きそうですわね」


シャーロット殿下が言ったので、私は尋ねた。


「……王都に寄るんですか? このまま宝物庫に行くのでは?」


「宝物庫の攻略にあたっては、王城の宝物殿から持って行かなければいけない物品がありますの」


ふむ……そうなのか。


「あと、これは王都ではないですが、会わなければならない人もいますわ」


「会わなければならない人?」


「ダルネア嬢ですわ」


「どなたですか?」


「ドラル・サヴローヴェンの遺稿を所持している公爵ですの」


シャーロット殿下が説明するところによると、王家と並ぶ発言力を持つ公爵家の当主だそうだ。


殿下は続ける。


「その遺稿は、宝物庫に関する重要な手掛かりになる可能性が高いですわ。それを手に入れるために、ダルネア嬢と交渉をしなければなりません」


「普通に譲ってもらうわけにはいかないんですか?」


「まあ、彼女は気難しい性格ですので……正直、かなり難航しそうな交渉ですわ」


そうなのか。


まあ、私は交渉に口出しするつもりはない。


キャンピングカーで殿下たちを送り届けるだけだ。


シャーロット殿下は言った。


「ひとまず王都を目指しましょう。ただ、護衛隊と【アランベイの街】で待ち合わせすることになっていますので、彼らがやってくるまでは、ここで待機となりますわね」


護衛隊がアランベイに到着するには2~3日はかかるだろう。


つまり最低2日はここで待機しなければならない。


私は尋ねた。


「今日はアランベイの街に泊まりますか? それともキャンピングカーで宿泊します?」


シャーロット殿下が首をかしげる。


「えっと……キャンピングカーに泊まっていいんですの?」


「んー、まあ、いいですよ」


車内を荒らしたりしなければ問題ない。


この人たちがそんなことをするとは思わないので、宿泊に否はなかった。


「では、是非泊まりたいですわ!」


シャーロット殿下がそう述べた。


ユレイラさんが口を挟んでくる。


「しかし、キャンピングカーの寝室は二つしかありませんよね? 泊まるとなれば、私は椅子で構いませんが、殿下にはきちんとした寝室を用意していただきたいのですが」


「ユレイラ。泊まらせていただく側が、無体な申し出をするものではありませんわよ」


「……」


シャーロット殿下がたしなめるが、ユレイラさんはこちらをじっと見つめてくる。


お前……わかってるよな? という視線の圧力だ。


まあ、殿下に不便な思いをさせるのはダメだよね。


私は提案した。


「わかりました。それなら、新しくベッドを造りましょう」


その言葉に、ユレイラさんは困惑したように首をかしげた。


「つ、造るのですか?」


「はい。まあちょっと車内を改造するだけなので……ここでお待ちいただいてもよろしいですか?」


「え……ええ」


困惑した様子のシャーロット殿下たちをよそに、私はさっそく、頭の中に錬成イメージを思い浮かべる。


そうして車内に戻ると、作業を開始した。




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