第3章76話:手記


「そういえば……」


私はふと、聞きたいことがあったと思い出した。


「殿下たちは、どうしてあの森――――ルーナ大森林を訪れていたのですか?」


ルーナ大森林は、魔物も出現する地帯だ。


王女殿下が用もなく訪れることは有り得ないだろう。


しかも、野営までして森の奥地に踏み入っていたわけで……


聞かないほうがいい事情があるのかとも思ったが、聞いてみることにした。


シャーロット殿下は答える。


「実は、ドラル・サヴローヴェンの残した手記が、あの森に隠されていると聞きましたの」


「へえ……手記が」


「はい。無事回収できましたので、今はアイテムバッグに保管していますわ」


宝物庫の扉を解く手掛かりが書かれていたりするのだろうか。


シャーロット殿下が尋ねてきた。


「ご覧になりたいですか?」


私は少し悩んでから答える。


「……いえ。ただの日記帳かもしれませんしね。術式の解読に難航したら、読ませていただこうと思います」


こうして私たちは、語らいながら、キャンピングカーに乗って侯爵領を出た。


ドゥーバン領に到達する。


そのまま快速で走り続けて、夕方には目的の街【アランベイ】の前まで辿り着いていた。


草原の向こうにアランベイの門が見える位置。


雑木林のそばに隠れるようにしてキャンピングカーを駐車した。


「も、もうアランベイの街に到着するなんて……有り得ない速さですわ」


キャンピングカーの外に出て、アランベイの街を眺めるシャーロット殿下が、驚いたように言った。


ユレイラさんも同意する。


「尋常ではない移動速度ですね。もしもこの馬車が量産されれば、物資の運搬力が桁違いになるでしょう。時代が変わりますよ」


んー、まあ、量産する気はないけどね。


勝手にキャンピングカーの工場を作って量産するなら止めるつもりはないが……


さすがに私も、自動車の作り方を教えるつもりはない。


なので、殿下たちが自力で製作することになるが、科学が発達していないこの時代で、キャンピングカーの製法を解明するのは無理だろう。

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