第3章72話:湖を離れる


<エリーヌ視点>


翌日。


早朝。


晴れ。


少しひんやりとした空気がただよう時間帯。


私は起き上がって、朝食を食べた。


ハムエッグにトーストだ。


コーヒーを飲んで、ゆっくりと目を覚ます。


「ふう……」


リビング椅子の背もたれに寄りかかる。


あと数刻もすれば、王女たちがやってきて、湖を発つことになるだろう。


(その前に、キャンピングカーの改造を行っておきましょうか)


そう考えた私は、工具と素材を用意した。


さっそく作業に取り掛かることにする。


主に、車体関連を強化を行った。


具体的には以下2つの改良をした。


1:錬金魔法でタイヤに【悪路走行耐性】を付与させる。これで砂漠や雪原など走行に不向きな場所も移動できる。


2:かねてより課題だった「走行中の揺れ」を錬金魔法で解消する。これで車内がほとんど揺れなくなる!


特に、揺れ対策は入念に行った。


キャンピングカーの揺れの激しさは、テーブルに置いたお茶やお菓子が全てこぼれ落ちるほど。


決して快適とは言いがたいものだった。


それを、錬金魔法を駆使した改造で、徹底的に対策した。


どれぐらい良くなったかは実際に走ってみないとわからない。


が、私の理論が正しければ、劇的な改善が見込めることは間違いない。


「さて……こんなものかな」


作業が終わる。


私は休憩がてら、キャンピングカーを下りた。


湖のほとりに立って、水面を眺める。


ここでスローライフする生活は、今日で最後となるだろう。


まもなく、王女殿下とともに湖を発つことになる。


この景色も、見納めというわけだ。


「一ヶ月間、お世話になりました」


そう湖に一礼してから、私はキャンピングカーへと戻っていった。






――――約2時間後。


キャンピングカーの外から声がして、私たちは車を降りる。


シャーロット殿下とユレイラさん。


それから鎧に身を包んだ男性兵士二人が立っていた。


片方は大柄で鎧に身を包んだ兵士。


片方は小柄で、おそらく補助魔法の使い手であろう軽装の兵士。


「ごきげんよう。お待たせいたしましたわね」


シャーロット殿下が挨拶をしてきた。


「おはようございます。いいえ、ちょうどアイテム錬成がひと段落したところでしたから」


それは嘘ではない。


暇なときはごろごろするか、アイテム錬成をしている。


ちょうど錬金魔法で武器や日用品の補充を行っていたのだが、それがひと区切りついたところだった。


シャーロット殿下は言った。


「では、森を出ることに致しましょう。ひとまず、わたくしたちの護衛隊に合流していただけますかしら?」


「わかりました」


私はキャンピングカーをアイテムバッグへと片付けた。


それからシャーロット殿下の案内で、彼女たちの野営地へと向かった。


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