第3章70話:シャーロット視点2


<シャーロット視点>


シャーロットは、王家のハイレベルな英才教育を受けてきた。


その中で錬金魔法についても学んでいる。


彼女自身は錬金魔法の適性があるわけではない。


が、知識や教養だけなら、プロの錬金魔導師にだって引けを取らないレベルだ。


そんなシャーロットから見ても、エリーヌの錬金技術は常軌を逸していた。


あのキャンピングカー……


あれは、この時代の平均的な技術力を遥かに越える……まさしく、未来技術である。


(浴室やトイレだけではない……壁材やマットも、いったいどんな素材が使われているか、想像もつきませんわ)


もちろんキッチンやトイレの機能性の高さには、驚愕させられたが、シャーロットはそれ以外にも、多くの情報を読み取っていた。


座席やテーブル、


床材や壁材、


窓ガラス、


マットレス、


……などなど、明らかに未知の技術で作られたものだ。


さらに壁に取り付けられた謎のパネルには、数字が表示されており、それが1秒ごとに動いていた。


その数字が、時計であると理解したときには、戦慄を覚えた。


この時代の"時間"は、水時計や日時計、あるいはロウソクによって図るもの。


それほど正確ではない。


1秒を正確に刻む時計というのは、いっそ病的な技術にすら思えた。


(キャンピングカーに使われる技術を会得するだけで、国は何倍にも成長できますわ)


たとえば、キッチンやトイレの製作技術。


それらを吸収し、職人たちに覚えさせ、各国の貴族に売りさばけば……


莫大な利権となるのは疑いようのないことだ。


(それだけにメリスバトンに任じられなかったのは痛いですわね)


エリーヌを手に入れることができれば、少なくともキャンピングカーに搭載されている技術は、リズニス王国のものとなる。


さらに、エリーヌが今後生み出す技術や道具も、リズニス王国の利権にすることができる。


逆に、エリーヌをよその国に取られたら、それらの技術は他国に奪われるわけで、あまりにも痛すぎる損失だ。


(まあ、まだ諦めてはいませんけれどね)


たとえメリスバトンに就けることができなくとも、せめて官職ぐらいは与えて、リズニス王国の臣として迎えるべきだろう。


そのための方策を、後日、配下の者たちに考えさせ、献策させるつもりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る