第3章:永世巫女
第3章69話:シャーロット視点
<シャーロット&ユレイラ視点>
シャーロットは、キャンピングカーのあった湖をあとにして、森の中を進んだ。
やがて20分ほど歩いたところに野営地がある。
ここには男性兵士が5人、女性兵士が5人……
計10人ほどの兵士が待機している。
全てシャーロットの護衛である。
ちょうどシャーロットが野営地に戻ったとき、女隊長と男性副官が険しい顔で話し合っていた。
二人は、シャーロットが戻ったのを見るや、慌てて駆け寄ってきた。
「で、殿下!」
「ご無事でしたか!」
「ええ。帰りが遅くなってごめんなさい」
すっかり夕暮れも過ぎ、暗くなってきている。
どうやら女隊長たちは、シャーロットたちの帰りが遅いので、探しにいこうと考えていたところだったらしい。
「この通り、わたくしはなんともありませんわ。あなたたち、夕飯はまだでしょう? すぐに準備して、食べてきなさい」
「はっ! 早急にご用意をいたします!」
「ああ。わたくしは必要ありませんわ。すでに食事は済ませてきましたので」
「……そうなのですか?」
いったいどこで? と、女隊長たちは首をかしげるが、それを横目にシャーロットは歩いていく。
「先にテントで休ませていただきますわね。では、失礼」
シャーロットがユレイラを引き連れて自身のテントへと向かう。
テント内には床布が敷かれている。
そのうえにシャーロットが腰をおろした。
ユレイラも座る。
「殿下……よろしかったのですか?」
ユレイラが切り出してきた。
「何がですの?」
「あの二人……アリスティ殿とエリーヌ殿を、宝物庫に案内することです。彼女たちは本当に信用できるのですか?」
「わたくしは信用に足ると感じましたが、ユレイラの目にはどう映りましたの?」
シャーロットが尋ねる。
ユレイラは難しそうな顔つきで答えた。
「正直に申し上げますと、判断に迷うところですね。本当に国外追放となってこの国に来たのか……嘘を言っているとも限りません」
「調べればわかるような嘘はつきませんわよ。国外追放は本当でしょう」
「……だとしても、汚職を働いた罪で追放されたのでしょう? 本人は濡れ衣だとおっしゃっていましたが、実は濡れ衣ではない可能性もあります。そのような者を殿下のそばに近づけるのは、とても不安です」
ユレイラの心配は無理からぬものであった。
たとえば相手が、どんな来歴の輩であれ、簡単に制圧できる者ならば、ここまで警戒しなくてもいい。
暴れだしても、その場で叩きのめせばいいからだ。
だが―――今回の相手は勝手が違う。
なぜならエリーヌは、アリスティを護衛に抱えているからだ。
アリスティは戦場で戦ってはいけないとされる【選ばれし六傑】の一人。
もしも彼女が本気で敵意を向けてきたら……
ユレイラといえども止められるかどうかはわからない。
エリーヌがもし悪人で、アリスティが忠実に悪意を実行する者だった場合、シャーロット殿下の身は極めて危険な状態にさらされるだろう。
シャーロットは見解を述べる。
「確かに濡れ衣かどうかは、調べてみなければわかりませんわね。ただ、国外追放が本当なのであれば、現在のエリーヌ嬢は帝国の住人ではない。多少問題がある御仁だったとしても、わが国に迎え入れるべきですわ」
「……それは、やはり彼女の技術に注目しているからですか?」
「ええ。あの錬金魔法の技術を、他国に奪われるのは惜しすぎますわ」
先刻、シャーロットが目にした数々の技術。
まさに規格外としか言いようがないものばかりだった。
あれほどの技術力を持った人材を、みすみす逃すわけにはいかない。
シャーロットはそう強く感じていた。
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