第2章62話:キャンピングカー案内


キャンピングカーを開ける。


中に入ると同時に、壁のスイッチを押して電気をつけた。


私は外に向かって言った。


「さあ、中へどうぞ。ああ、靴はそちらの靴箱に入れてから、おあがりください」


「え、ええ……」


シャーロットさんとユレイラさんは靴を脱いで、靴箱へ。


靴下の状態でリビングにあがる。


シャーロットさんは困惑の色をあらわにしながら、きょろきょろと周囲を見回している。


「これは……本当に馬車ですの?」


ユレイラさんも驚きながら言う。


「見た事もない内装ですね。通常の馬車に比べて広いですし……照明も、本当に明るいです」


電気照明は部屋の隅々まで光を照らす。


ロウソクの火に慣れ親しんできた者からすれば、衝撃を受けるほどの差に違いない。


するとユレイラさんがふいにキッチンへと目を留めた。


不思議そうな目でガスコンロを見つめながら、尋ねてくる。


「これは何をするところでしょう?」


私は答える。


「それはキッチンですね」


「……え?」


ユレイラさんがきょとんとした。


「失礼。いまキッチンだとおっしゃったように聞こえたのですが、聞き間違いですか?」


「いいえ。そう答えましたよ」


するとユレイラさんが非難めいた声をあげた。


「ご、ご冗談を! 馬車の中にキッチンなど……あるはずがないでしょう!?」


「いえ……本当にキッチンですよ。見ててください」


私はガスコンロのツマミをくるっと回した。


ボッ、と火がつく。


そのうえにフライパンを乗せた。


「こんなふうに火をつけ、フライパンや鍋を乗せて食材を調理します。ちなみにこちらの蛇口を回せば水も出ます」


ためしに水を出してみた。


一連の光景を見ていたシャーロットさんとユレイラさんは、絶句していた。


シャーロットさんは言う。


「そこの取っ手を回すだけで火がつくのですか? どういう魔法なんですの?」


「えーっと、魔法で作りはしましたが、仕組み自体は魔法ではないんですよね。ただそれを説明するのは、結構専門的な話になるので、遠慮させてください」


「そ、そうですの……」


シャーロットさんはあっさり引き下がった。


どうせ説明されてもわからないと思ったのだろう。


まあ、私も科学の基礎を一からレクチャーするつもりもない。


話題を変えるように、シャーロットさんが尋ねてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る