第2章61話:バーベキュー終了
私は言った。
「ビールはいくらでもありますし、ぐいぐい飲んでくださって構いませんよ」
言ってはなんだが、ビールなんて名品というわけではない。
この世界では珍しいから、希少なのは間違いないが、本来は、ぐびぐび飲んで楽しむものだろう。
ユレイラが言った。
「このような名酒を気前よく振舞ってくださるとは、エリーヌ殿は、懐の深い御仁ですね」
「えっと……それほどでもありませんよ」
私がそう苦笑しながら答えると、シャーロットさんが言ってきた。
「これほどのもてなしを受けたのですから、こちらも十分なお礼をしなければなりませんわね。ユレイラ、例の宝玉を出しなさい」
「……はい。かしこまりました」
ユレイラさんがアイテムバッグから丸い球を取り出した。
紫色に輝く宝球である。
「【魔宝玉】ですわ。錬金魔導師でしたら、ご存知でしょう。忘れないうちに贈呈しておきますわね」
―――魔宝玉。
かつてはSランクにも認定されていた重要な素材である。
大きな魔力を保有する魔具や武器……それらを製作する錬金素材として、必須ともいうべきアイテム。
私は素直に喜んだ。
「ありがとうございます! 魔宝玉は、いろいろな製作に活用できるので、本当に嬉しいです!」
魔宝玉を受け取り、アリスティにアイテムバッグへと収納させた。
さて、食事が進む。
シャーロットさんもユレイラさんも、バーベキューを存分に楽しんでくれた。
そして夕陽が沈み、夜のとばりが降り始めたころ。
すっかり四人とも、お腹が膨れたので、バーベキューを終了することにした。
シャーロットさんが言った。
「至高のひとときでしたわ。素晴らしい夕食を提供していただき、ありがとうございました」
「いえいえ。こちらこそ、楽しんでいただけたようで何よりです」
すると、シャーロットさんがキャンピングカーのほうを振り向いた。
「夜になってきましたね。こう暗くなっては、あの馬車の中を見せていただくことも難しいでしょうか」
私が首を横に振って言う。
「いえ。さきほども申し上げた通り、照明がありますので、ご覧になれますよ」
「その照明というのは、やはり、ロウソクを使ったものではない……のですわよね?」
「はい。私が独自に開発したものですから。……まあ、実際に見てもらったほうが早いと思います。それじゃあ、私たちの馬車――――キャンピングカーへと参りましょうか」
私たちは立ち上がる。
バーベキューセットは後で片付けることにして、キャンピングカーに向かって歩いていった。
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