第2章59話:四人でバーベキュー


「タレというのはこちらですの? 不思議なとろみのあるソースですわね」


それからフォークで突き刺した野菜をタレにつけた。


口に運んでいく。


「まあっ!」


シャーロットさんが感嘆の声をあげた。


「これは美味なソースですわね! これと野菜だけでも、ご馳走になりますわよ!?」


さすがにご馳走というのは言いすぎだと思うが……


野菜にタレをつけるだけでも、そこそこ美味しいのは同意する。


シャーロットさんはユレイラさんを振り返って言った。


「ユレイラも、座って食べなさいな」


「いえ……私は」


「今日は無礼講ということにいたしましょう。わたくしたちは冒険者なのですから、主従関係はナシということで」


「……」


ユレイラさんは困惑していたが、最終的には折れた。


そのときシャーロットさんは、不思議そうな顔をして聞いてきた。


「そういえば、アリスティさんが料理を作るのではないのですわね? お二人には主従関係はないんですの?」


「いえ、私とアリスティは主従の関係です。ただ、この催し……バーベキューは、今回が初めてですので、私がアリスティに見本を見せているんです」


「なるほど。そのバーベキューというのは、エリーヌさんゆかりの催しということですのね」


「はい。私の故郷で流行っていたものですね」


「湖を前にした食事会とは、とても風情のある催しですわ。わが国でも取り入れてみましょうかしら」


ふむ。


わが領地、ではなく、わが国……か。


もうその発言で、やんごとなき身分だと自白しているようなものだが……聞かなかったことにする。


と、そろそろ肉が焼けてきた。


「ウルフ肉です。こちらもタレをつけて召し上がってください」


紙皿に肉を移していく。


シャーロットさんが言った。


「本当に良いにおいですわね。食欲をそそりますわ!」


ユレイラさんも同意する。


「確かに……これほど香ばしい匂いの肉料理は、初めてですね」


そうして肉を観察したのち、フォークで突き刺した。


タレに浸したあと、口に運んでいく。


咀嚼。


するとシャーロットさんが目を見開いた。


「え!? な、なんですのこれは!? こんなに美味しいお肉が!?」


ユレイラさんも唖然として固まっている。


「……わ、私も驚きました。ここまで美味しい肉料理は初めてかもしれません。肉の旨味がタレに絡み合って、本当に素晴らしい」


二人はひときれ、ふたきれと嬉しそうに食べていく。

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