第2章54話:炭火焼


「これが炭火焼ですか? こんな調理方法は初めて見ました」


アリスティが感心したように、バーベキューコンロを見つめていた。


「炭火焼は本当に美味しいですよ。初めて食べたら驚くと思います」


炭火焼は、肉の表面を素早く焼いて、肉の中の旨味を逃がさないように閉じ込める焼き方だ。


肉汁がジュワッと溢れ出てくる焼き上がりになるので、通常の焼き方より美味しいのだ。


原理を説明すると、アリスティが感心する。


彼女は聞いてきた。


「ちなみに、この銀色の紙はなんでしょう?」


「その紙はアルミホイルといいます。アルミホイルに包んで焼く方法はホイル焼きといって、蒸して焼く調理方法ですね」


「紙に包んで食材を焼くのですか……珍妙でございますね」


「この紙は、水分を通さないんです。なので、キノコや肉からしたたる肉汁、そして調味料であるタレを、紙の内側に閉じ込めることができます」


「ああ、なるほど!」


「まあ、あとはバーベキューでバターを使うときは、ホイルに包んだほうが、溶かしやすいということもありますね」


「そのバターというのは――――」


アリスティは、いろいろと質問をしてきた。


バーベキューに使う調味料、調理法などは、メイドである彼女にとって、とても関心の惹くものだったらしい。


私はアリスティの質問に一つ一つ答えつつ、トングで食材を焼いていく。


数分後。


ようやく食材が焼けてきた。


「そろそろ食べましょうか」


トングで食材をつかんで、紙皿へと移した。


肉、野菜、キノコと、どんどん移していく。


「先に食べてくださって構いません。肉も野菜も、タレをつけて召し上がってみてください」


「はい。では――――」


野外テーブルに座ったアリスティ。


フォークを手にとる。


紙皿に乗ったウルフの焼肉をタレにひたした。


そして口に運ぶ。


「……!」


アリスティが目を見開いた。


「これは……本当に美味しいですね! 普通の焼肉料理と旨味が全然違います!」


「そうでしょう? 私も、高級店の焼肉などを除けば、炭火焼が一番好きでしたね。炭火焼は独特のこんがり感があって、美味しいんですよね」


「とてもよくわかります。このタレも、素晴らしい味わいですね!」


「はい。ビールと一緒に飲んだら最高ですよ」


「ビール……お嬢様が製作なさったお酒ですよね」


ああ……


そういえばアリスティはまだビールを飲んだことがなかったか。


だったら最高のタイミングでビールデビューをすることになるね。


「飲んでみてください。バーベキューにビールは最高に合いますから」


私はビールをジョッキに入れてあげた。


それをアリスティの前に差し出す。

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