第2章50話:BGM


その翌日。


朝。


晴れ。


私はコンテナハウスを錬成した。


左右25メートルぐらいの箱型のコンテナ家である。


このコンテナハウスで何をするかというと……


録音だ。


せっかくピアノで音楽を弾けるようになったので、その演奏を録音して、キャンピングカーのBGMとして使おうと思ったからである。


だが、野外でピアノの録音をしても、思ったより雑音が入る。


ゆえに防音設備を完備した録音施設で行おうと思った。


つまり、このコンテナハウスは、ピアノのレコーディングスタジオというわけである。




さらに録音したデータを調整するために、ノートパソコンも一台製作しておく。


異世界史上、初めてのパソコンである……!


まあ、今のところ音楽データの処理にしか使うつもりはないけどね。




湖のほとりに置いたコンテナハウスの中で、さっそく20曲ぐらいのクラシックを演奏し、録音する。


保存できたデータはノートパソコンに映して、再生しようとする。


ああ……そうだ。


イヤホンも必要か。


音楽を再生するだけなのに、作らなきゃいけないものが多いね。





イヤホンを錬成して、クラシック曲を再生し、確認してみる。


うん、良い感じの音質だ。


十分使い物になるだろう。


さて……あとは。


(スピーカーを作らないといけませんね)


キャンピングカー内で流すための音響設備の構築が、必要となるだろう。


スピーカーを設置する場所は、


私の寝室、


アリスティの寝室、


リビング、


お風呂、


……の四箇所でいいだろう。


スピーカーと、コントロールパネルを壁に設置する。


まあ、錬金魔法をもってすれば、これも10分程度で完了した。


(こうなると、音が他の部屋に漏れると良くないですね)


四つの場所にスピーカーを置いたということは、最大で、四つの部屋から同時に音楽が流れるということになる。


それはうるさいというか、何がなんだかわからなくなってしまうだろう。


壁を防音にするか?


いや、さすがに面倒だ。


魔法で【消音石】を作ろう。


消音石は、音が聞こえる範囲を限定できる魔法石だ。


本来は、軍人や権力者が、他者に聞かれたくない内緒話をするとき、用いるアイテムである。


軍の家庭で育ったエリーヌは、当然、作り方を知っている。


ゆえに、一瞬で製作した。


このアイテムはいろんなところで使えそうなので、この機会に、30個ほど量産しておくことにする。


とりあえず、スピーカーを設置した四つの部屋に、消音石を置いておく。


これで、音が他の部屋に漏れることはないし、部屋ごとに別々の音楽を流すこともできる。


完璧だ!!


さーて、そろそろ実践をしてみよう。


さっそくスピーカーにクラシック曲を入れて、リビングで、BGMを流してみることにする。


BGMを流すときは、コントロールパネルの開始ボタンを押すだけだ。


「……よし」


リビングに音楽が流れ出す。


ちなみに曲は、ヘンデルの【水上の音楽】。


そのピアノバージョンだ。


無事に成功である。


これで、いつでも車内で音楽が聴けるようになるだろう。

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