第2章36話:射撃補正の指輪


「おお……!?」


そのとき私は奇妙な感覚にとらわれた。


さながら射撃の全てを理解したかのような超感覚。


風向きや重力、敵との距離、弾を撃ったときの軌道まで全て把握できる。


まるでコンピュータが弾道計算を行ってくれるかのような……完璧な理解。


「まさか、これが指輪の効果……?」


試しに【射撃補正の指輪】を外してみた。


直後、スゥッと超感覚が消えていった。


その状態でスコープをのぞいても、まるで弾道が予測できない。


ふたたび指輪を身につける。


すると、また超感覚が身を包んだ。


「す、すごい……さすがSランクの指輪だ!」


これを身につけていれば、的を外すわけがない。


どんなノーコンでも射撃を成功させられるだろう。


私はさっそくウルフを狙った。


距離500メートルほどだ。


トリガーを引き絞り……


―――ズドンッ!!


1秒弱かけて弾が飛んでいき、着弾。


ウルフが吹き飛んだ。


射撃は成功だ。


「よし、次は……」


もっと硬い的を狙ってみよう。


周辺を探り、野生のゴーレムを発見する。


ロックゴーレムか。


よし、あれを狙ってみよう。


距離は1400メートルほど。


ぎりぎりの射程距離。


照準をあわせ、トリガーを引き絞る。


次の瞬間。


……ズドンッ!!


2秒ほどかけて飛んでいった弾が、ロックゴーレムの身体に吸い込まれていく。


そして着弾。


岩で出来た身体は粉砕したかのごとく崩れた。


「距離も威力も問題ナシ。うん、テスト成功だ」


無事に射撃テストが終わったことを確認して、アンチマテリアルライフルを片付けた。


一応、遺体の確認がてらロックゴーレムのもとまで行った。


ロックゴーレムの魔石は、まあまあ貴重なので回収しておく。


一部始終を目撃していたアリスティが驚嘆していた。


「アンチマテリアルライフル……でしたか。なんというか、常軌を逸した武器ですね」


「魔物を狩るのに便利でしょう?」


「便利というレベルではありませんよ。弓や魔法弾に比べて、射程と速度がおかしすぎます……音響兵器といい、地球産の武器は規格外のものが多いですね」


「私に言わせれば、魔法もなかなか規格外だとは思いますけどね」


魔法はいずれ科学を越え得る存在だ。


そもそも【射撃補正の指輪】というチート指輪だって、そんな魔法の産物である。


まあ今の異世界の魔法は、一部がチート性能なだけで、まだ科学の足元にも及ばないことがほとんどだが……


「そういえば、その音響兵器も、もう一つ作っておきたいですね」


現在の音響兵器は音波が【全方位】に飛んでいく。


しかし、必ずしも、全方位じゃないほうがいいこともある。


全方位だと、敵味方関係なく、近くにいた者を全員照射してしまうからだ。


だから【全方位】ではなく【単方位】に照射できる音響兵器も製作。


これのテストもおこなっておく。


――――無事完了。


満足顔で、私はキャンピングカーに戻った。



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