第1章28話:戦利品



遺体の処理が完全に終了したあと、キャンピングカーを走らせ、森を抜けた。


草原を走る。


「無事に切り抜けられましたね。お嬢様」


「そうですね」


アリスティの言葉に、私は同意した。


フレッドとの戦いは、私の人生にとって、大きな山場だっただろう。


でも、乗り越えた。


安堵と、勝利の喜びが胸に満ちる。


アリスティは言う。


「ここからは安全に国外まで移動できるでしょう。フレッド様以上の脅威は、もう無いでしょうし」


「そうあってほしいものですね。兄上みたいなのと戦うのは、もう御免ですから」


私が肩をすくめて言うと、アリスティも苦笑した。





完全に日が暮れたので、草原にある丘のふもとで駐車する。


今夜はここで車中泊だ。


その際、フレッドたちから回収した戦利品の確認を行った。


「それにしても、いろいろ回収できましたね」


私はつぶやく。


剣、槍、ナイフ、斧などの武器類。


鎧や盾などの防具類。


弓などの飛び道具。


魔法杖や魔導具。


それから大量のポーションやアイテム類。


25人ぶんのアイテムバッグ。


どれもこれも高品質であることがわかる。


ほとんど全て上級ランクの品物だろう。


しかも、金貨も20000枚以上ある。


さすが、フレッドとセラスから回収できた戦利品だ。


「使わないものが多いので、明日【アネットの街】に着いたら売却しましょうか」


私がそう告げると、アリスティが尋ねてきた。


「全て売るのですか?」


「んー……マナポーションとアイテムバッグ、それから鉄製品と魔導具は取っておきたいですかね」


マナポーションは錬金魔法の魔力消費を回復するのに絶対欲しい。


アイテムバッグもいくつあっても困ることはないだろう。


鉄製品は分解して、鉄としてリサイクルできる。


鉄はいろいろ使い勝手の良い金属だから、できるだけとっておきたかった。


魔導具については研究のために確保しておこうと思う。


「あ! 待ってください。これも欲しいですね」


ふと気づいて、私はアクセサリーの一つを拾い上げる。


セラスの弓使いが所持していたものだろう、射撃の命中率を劇的に上げる指輪だ。


名前は【射撃補正の指輪】。


たしかSランクの指輪だったはずだ。


これを装備すれば、射撃の腕が必要な銃火器も扱えるようになるかもしれない。


「ちなみにアリスティは欲しいものはないですか?」


「そうですね。強いていうならマナポーション以外のポーション類も、全て取っておきたいところです」


「あー……兄上とセラスのポーションは高ランクが多いみたいですからね」


今のところ、私は高ランクポーションを自作できない。


ポーションは原理がよくわかっていない魔法アイテムだからだ。


「じゃあポーション類は全てストックしておきましょうか」


「承知しました。では確認ですが、ポーション、アイテムバッグ、鉄製品、魔導具、射撃補正の指輪を残して、それ以外は売却ということでよろしいですね?」


「はい。それで間違いないです」


アリスティは売却アイテムをアイテムバッグに詰めていく。


私は言った。


「ちなみに、アネットでの買出しは私が行います。アリスティは護衛をお願いします」


トク村のときは全てアリスティに任せた。


しかし今回は、買いたいものが多いのだ。


それらを全てアリスティに買ってもらうのは大変だろうと思ったのである。


「よろしいのですか? ここはまだブランジェ領ですが……」


ブランジェ領での私は、ただの犯罪者。


しかも領主の娘。領民にはそこそこ顔が知られている。


あまり堂々と出歩いても、いいことはない。


しかし、ちゃんと対策を考えた。


私はそれを述べる。


「仮面を作り、それをかぶって行けば大丈夫かと思います」


「なるほど……それならエリーヌ様だと周囲にバレませんね」


「はい。ただメイドを連れ歩いていると、貴族だとバレかねないので、アリスティはメイド服ではなく平民用の衣服でお願いします。私も自分の服を作っておきます」


「かしこまりました」


こうして明日の予定が確定する。


話が終わったので、就寝の準備を行った。




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