第1章20話:ハンバーグ



回収作業が終わったあと、キャンピングカーを走らせて、ウルフと戦った場所から少し離れたところで駐車。


そこで昼食を作ることにする。


ふと、前世料理を食べてみたくなった。


よーし。


ハンバーグを作っちゃおう。


「アリスティ。今日のお昼は私が作ります」


「え? お嬢様が?」


「はい。食べたいものがありまして」


「申し付けていただければ、私が作りますよ?」


「いえ……私だけが知ってる料理なので」


そう告げてから、私は車内のキッチン前に立つ。


と、その前に……。


(調味料を作らないと)


ハンバーグといえばデミグラスソース。


これをまず作らないといけないが……。


(錬金魔法で作れないかな?)


料理は錬金魔法で一瞬で作るのは無理なようだ。


しかし、調味料ならば可能なのではないか?


そう思って私は、錬金魔法を使って調味料を作ってみる。


すると……。


(おお、できるじゃん!)


見事に一瞬でデミグラスソースが完成した。


素材さえあれば、錬金魔法でタレやソースは作れそうだね。


(よし、じゃあ後はハンバーグを作るだけだ)


ウルフ肉を調理していく。


ハンバーグは前世で散々作ったことのある料理だ。


手間取ったりはしない。


サクサクと手際よく、肉をこねこねして調理を行っていく。


最後にフライパンで焼く。


出来上がったハンバーグを皿に移したあと、デミグラスソースをかけて完成だ!


あとは野菜を刻んだあと、ハンバーグに添える。


「できました!」


キャンピングカーのリビングへとハンバーグを盆に載せて持っていく。


テーブルの上に置くと、席に着いていたアリスティは尋ねてきた。


「これは……?」


「ハンバーグです。冷めないうちに頂きましょう」


私も席に着く。


そして、まずはひとくち食べてみる。


(……!!)


これは。


美味しい。


いや、本当に美味しい。


ウルフ肉がハンバーグに合うのだろうか、というのは一つの心配だったけど、杞憂だったようだ。


しっかりと厚みのある良質なハンバーグ。それでいて程好く柔らかい。


歯でかみ締めると肉からぎゅっと肉汁が染み出してくる。


その旨味のすさまじさときたら……たまらないものがある。


そしてデミグラスソース。


ハンバーグから染み出した肉汁とデミグラスソースが絡み合うと、さらに上質の旨味だ。


自然と笑みがこぼれてしまうほど、素晴らしい味である。


(ウルフ肉でハンバーグを作ったのは正解だったよ。これは高級店に出せるレベルだね)


私がそんなふうに感動していると。


アリスティもハンバーグを食べはじめた。


すると、すぐにアリスティは目を見開く。


「な、なんですかこれ……」


アリスティが、驚きを込めて言った。


「お、美味しいです! というか、美味しすぎます! ちょっと待ってください、これ本当にお嬢様が作ったんですか!?」


「そうですよ。というか料理してるとこ、横で見てたでしょう」


「いや、ですが……っ、私の作る料理より美味しいじゃないですか!? メイドとして立つ瀬がありませんよ……」


「ん……それはどうでしょう? レシピを学んだら、アリスティのほうが上手く作れると思いますけど」


「レシピを教えてもらえるんですか!?」


アリスティが全力で食いついてきた。


「もちろんそのつもりですよ。今後、食べたいと思ったときに作ってもらいたいですからね」


「作ります! 是非この料理の作り方を教えてください!」


アリスティが嬉しそうにそう述べる。


軍人としてだけでなく、メイドとしても上を目指したいという向上心の高さがうかがえる。


私は苦笑しながら言った。


「でもまあ、まずは国を出ないといけませんからね。教えるのはそのあとでもいいですか?」


別にハンバーグの作り方を教える時間ぐらいは取れるが、今は他にやるべきことがあるからね。


たとえばキャンピングカーの武装を強化したりだとか。


そういう諸々の作業が落ち着いてから、ゆっくりとアリスティに前世の料理を覚えていってもらいたいと思う。


「はい。では楽しみにしています!」


アリスティはそのように答えてから、ハンバーグの続きを食べ始めた。


(さて、私も続きを食べよう)


そうして私たちはランチを満喫した。

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