第1章19話:ウルフの肉をゲット



キャンピングカーをふたたび走らせる。


人魚の湖から街道に戻る。


リビングのテーブルの対面にアリスティが座る。





少し経ってから、私たちがお茶を飲んでいたとき。


ふいに警報器が鳴った。


この警報器は、運転ゴーレムが、私たちに異変を報せるためのものだ。


私は運転席に向かって、フロントガラスの向こうを見る。


ウルフである。


見える範囲で4体ほど。


どうやら魔物に囲まれているようだ。


「アリスティ。魔物が出てきたようです」


「魔物ですか」


「はい。ウルフの群れがキャンピングカーを取り囲んでいます」


言いつつ、私は一瞬、このままウルフを無視して突き進んでもいいのではないか、とも考えた。


でも、すぐに思い直す。


無茶をして、キャンピングカーが壊れたら面倒だ。


それに……


「ちょうど昼食を作ろうかと思っていたところです。ウルフ肉、ゲットしちゃいましょう」


ウルフ肉は柔らかくて食べやすく、ほどよく旨味もあって美味しいのだ。


ランチにはもってこいだろう。


「というわけでアリスティ、お願いできますか?」


「承知しました。ただちに片付けてきます」


「はい。ついでに1体だけでいいので解体も済ませてもらえると助かります」


「承知しました」


アリスティは返事をしてから、キャンピングカーを下りていった。


(さて……私は今のうちに防腐剤を作っておきましょうか)


昨日から食料の保存については考えていた。


アイテムバッグに入れても食料は時間とともに鮮度が落ちていく。


それを防ぐために、この世界には【防腐魔法】がある。


しかし防腐魔法は、誰でも使える魔法ではない。


だから私は、防腐魔法の代替として【防腐剤】を作ろうと考えた。


(まあ1分もあれば作れますね)


理論は頭の中にあった。


ゆえに製作を開始する。


「できました!」


ちょうど1分。


ウルフ10体ぐらいまでなら防腐できる防腐剤を完成させた。


ただの防腐剤ではなく、30日ほどは一切腐らなくできる優れものだ。


名付けて【魔法防腐剤】と呼んでおこう。


「さて……アリスティはウルフを倒せたかな?」


キャンピングカーの外を確認してみる。


アリスティはとっくにウルフを全滅させていた。


そして解体処理も終わったところのようだ。


さすが軍人メイド。


速いね。


まあ、アリスティは高度な解体技術を持っているから、解体処理が爆速なんだよね。


「お嬢様、終わりました」


「はい。では、まず防腐剤をかけますので少々お待ちください」


私は倒されたウルフたちに防腐剤をかけていった。


そんな私の行動に、アリスティが首をかしげる。


「それは何をしているのですか?」


「防腐魔法と同じ効果を持った薬をかけてます。肉を30日ほど腐らないようにできるんです。アリスティが戦っているあいだに開発しました」


「はぁ。サラッとおっしゃいますけど、とんでもない発明ですよねソレ……」


そうかな?


まあ、そうかも。


防腐魔法を使わない保存方法といえば、塩漬けとか燻製だもんね。


それらは30日も保たないし、元の味を保てるわけでもない。


「……さ、終わりました。ウルフをアイテムバッグに詰められるだけ詰めていきましょう」


「了解です」


私とアリスティは手分けしてウルフの肉と死体をアイテムバッグに詰めていく。

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