第1章17話:湖へ


<エリーヌ視点>


キャンピングカーの寝室で目覚める。


私はベッドで上体を起こし、大きく伸びをした。


ここはキャンピングカーの最後部。


視界の左側には車の後窓があるのだが、いまはカーテンが閉まっている。


そのカーテンを開いて、外の景色を眺めた。


森と草原。


ほの暗い早朝。


しかしちょうど太陽が昇り始め、地上を照らし始めていた。


それはとても美しく、私は見惚れてしまった。


「綺麗……」


ふと森から3匹の魔物がのそのそと現れていた。


ヤギ型の魔物である。


異世界の魔物。


そう、ここは異世界だ。


私は転生して、この世界にやってきた。


19年間、エリーヌとして生きてきた。


改めてそのことをしみじみと実感する。


(私は前世で死んだ。だから日本に帰ることはない)


死んだ者が生き返ることはない。


それはこの異世界においても絶対の不文律だ。


私は……この世界で生きていくんだ。


今までも、これからも。


「さて……朝食にしよう」


起き上がって、私は寝室を出た。






朝食を食べたあと、もう一度村にいく。


トク村ではこの日、朝市が開催されることが知られていた。


朝市にはいろいろな商品が販売される。


主に食料品がね。


なので、アリスティに頼んで買ってきてもらうことにした。


結果、野菜を中心にいろいろ食材を手に入れることができた。


今日の食事として使わせてもらおう。


さて……キャンピングカーを発進する。


運転は全てゴーレムに任せる。


そうして私は座席に着いた。


街道を走り始めるキャンピングカー。


やがて30分ほど走ったあたりで、私たちはとある湖に辿り着いた。


山と森に囲まれた湖。


人里離れた場所にあるため、周囲に人の気配はない。


ただ、この湖には人が住んでいる。


人魚である。


私は、その人魚に会いに来た。


「ユリシェ、いますか?」


呼びかける。


しばらくすると、湖から人影が浮かび上がってくる。


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