第1章15話:(アリスティ視点)魔石と夕食
<アリスティ視点>
「そうだ、少しサービスさせていただきましょう。こちらの魔石ですが、無料で贈呈させていただきますよ」
店主はカウンター奥の戸棚から魔石を取り出す。
ピンク色の光を秘めた魔石であった。
「魔石……ですか」
「ええ。まあ、売れ残りではあるのですが、そこそこ貴重な魔石だとは存じます」
「なんという魔石ですか?」
「大ハルピュイアの魔石ですよ」
大ハルピュイア。
ハルピュイアの上位種だ。
Cランクモンスターとして知られている。
その魔石となると、確かに貴重品だ。
「なるほど。サービスしていただけるというのであれば、お言葉に甘えて頂戴します。店主、お名前は?」
アリスティは魔石を受け取りつつ、尋ねた。
「私はロニーと申します」
「そうですか、ロニー様。あなたのご厚意は、わが主にしかと伝えておきます」
「ええ、ええ。今後ともごひいきにと、申し伝えてください」
悪いが、それは難しい。
エリーヌは今後、国を出ることになる。
この村には二度と訪れることはないかもしれない。
もちろん、それを口に出すことはなく。
アリスティは一礼をしてから店をあとにした。
それから他の店を巡って素材や食材を買い集める。
結果、残ったのは金貨7枚だった。
買出しを終えたので、キャンピングカーに戻ってくる。
そのころにはすっかり日が暮れていた。
辺りは真っ暗だ。
しかし、キャンピングカーのドアを開けると、明るい光が漏れた。
火やたいまつ……ではない。
なんでも、電気という照明を点けたり消したりできるそうだ。
この明るい光こそが、電気なのだろうか。
「おかえりなさい、アリスティ」
「ただいま戻りました。お嬢様」
挨拶をしてから、キッチンで料理を行う。
コンロなる設備の使い方は教わった。
テキパキと料理を作っていく。
鶏肉料理と野菜のスープを作る。
そこにパンと果物を加えて、夕食だ。
「アリスティも食べてください」
「いえ、私は従者なので、後で食べさせていただきます」
「ダメです。これは命令です。一緒に食べましょう」
本来、主とメイドがともに食卓に着くことは許されない。
しかし命令と言われては、断るわけにはいかない。
テーブルに着いて、エリーヌと二人で食事を行う。
食事が終わる。
食器の片付けをした。
そしてシャワールームに入って水浴びを行った。
シャワーはなんと温水だった。
どういう原理でそうなっているのか?
専門の魔法使いがいなければ、水温の調節はできないはずなのに……
ただ、さらさらと雨のように降り注ぐ温水は、たとえようもなく心地良かった。
シャンプーなる石鹸剤も、素晴らしい代物だった。
さて、シャワーを浴びたあとは、就寝の準備。
「見張りはゴーレムに任せて……と」
エリーヌがゴーレムを創造した。
車外に1体。
車内に1体。
見張りとして配置する。
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