第1章14話:(アリスティ視点)村で買い物


<アリスティ視点>


トク村は、人口400人ほどが住む、静かな村だ。


道具屋、


雑貨屋、


冒険者ギルド、


酒場、


など、いくつか店や施設も存在する。


アリスティはアイテムを売却するため、ひとまず道具屋を訪れることにした。


エリーヌが錬成したアイテムは、大量だった。


恐るべき製作速度で次々と量産したため、その数はなんと200以上もある。


まあ、ほとんどはポーション類だが。


それでも、わずか数時間程度で作ったにしては異常な量だ。


全て売却できれば、それなりの資金になることは予想できた。


「すみません。アイテムの売却をお願いしたいのですが」


道具屋の店主に声をかける。


そうしてアイテムバッグから、錬成したアイテムを取り出した。


回復ポーション、解毒ポーション、スタミナポーション。


また村で販売することを想定し、農具も多数あった。


道具屋の店主が一つずつそれらを検品していく。


「では、買取料金はこちらで」


店主からは金貨30枚をいただけた。


さらに他の店も巡り、全て売却していく。


結果、9割以上のアイテムを売却できた。


総額、金貨80枚を獲得することができた。


ここから、もう一度道具屋にいって素材を購入することにする。


「お客さん、また来られたのですかな?」


道具屋の店主が声をかけてきた。


「はい。素材を購入したいと思いまして」


「へえ、どの素材でしょう?」


「ええとですね……」


カネに糸目はつけなくていい、というのがエリーヌの仰せである。


なので値段を気にせず、アリスティは次々と欲しいものを指定していった。


「こちらと、こちらと、こちらの素材……ああ、こちらも。これらも全部欲しいですね。それから――――」


どんどん指定していく。


道具屋の店主は焦ったように呼び止めた。


「ちょ、ちょっと待ってください。いったいいくつ購入するつもりですかな?」


「おそらく、この店の商品は3割ほど買うことになるかと」


村の店だ。


品揃えは豊富ではない。


だから買えるだけ買うことになるだろう。


店主は脱帽し、それから肩をすくめた。


「さすが、お貴族様は違いますな」


「貴族……」


「あなたはメイドでしょう? 主のおつかいで参られたのでは?」


「ええ、まあ」


努めて平然と答えつつ、アリスティは身構える。


ここはまだブランジェ領内だ。


国外追放となったエリーヌのことは、領民にもよく知られている。


もしアリスティがエリーヌのおつかいで来たと知られたら、商品を売ってもらえない可能性もある。


犯罪者であれ儲けになるならと売ってくれる商人もいるが、


犯罪者なんかには売りたくないという場合もあるからだ。


「沢山買っていただけるのは有難いことです」


アリスティの懸念を悟られることはなく、会計を済ませることができた。


そのとき、店主は言った。



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