第1章13話:最初の村へ到着
3時間後。
私たちは村に到着した。
トク村である。
領都から一番近くにある村だ。
キャンピングカーが見つからないように、村の手前にある森のそばに駐車する。
近くにはほろほろと小川が流れている。
車を降りたアリスティが、遠くに見える村を眺めながら驚愕していた。
「まさか……こんなに早くトク村に到着するなんて」
まあ、馬車なら1日はかかるからね。
昼に出発して夕方に到着するなんて、この世界の常識からは考えられない速度だろう。
「お嬢様が製作なされたキャンピングカーは、まさに規格外の乗り物ですね。これが普及すれば、時代が変わりますよ」
「……まあ普及させるつもりはないですけどね」
というか、無理だ。
馬車から現代自動車までには大きな隔たりがある。
前提となる科学的知識が普及しないと、自動車の製作は難しいだろう。
「それではアリスティ。トク村へ、錬成したアイテムの売却と、素材の買出しに行ってもらってもよろしいですか?」
「……できればお嬢様のそばを離れたくないのですが」
「心配しないでください。いざとなったら戦闘用のゴーレムを2体創造できますから」
私の戦闘ゴーレムは、そこらの盗賊ぐらいなら蹴散らせる強さはある。
さすがに手練れが相手となると厳しいが、最低限の護衛をするには十分だ。
「それと何かあったときは、この警報器で爆音を鳴らします。これが聞こえたら助けにきてください」
さっき錬成しておいた警報器を示唆する。
この警報器の本来の用途は別にある。
これは、ゴーレムが運転中に異変を感知したとき、私たちに知らせるための連絡装置なのだ。
しかし、オーディオの出力を最大に設定すれば、爆音を鳴らすという使い方も可能である。
それこそ耳が壊れるぐらい強烈な爆音を。
(ん……耳が壊れる……?)
私はそのとき武器開発のヒントを得た。
もしかすると安価で強力な兵器を製作することができるかもしれない……と思った。
まあ、それはともかく。
「これが買ってきてほしい素材のメモです。それではよろしくお願いします」
「はあ、わかりました」
メモを受け取るアリスティ。
それから彼女は、売却用のアイテムをアイテムバッグへと入れていく。
全て持ったことを確認したアリスティは村へと歩き出した。
私はその背中を見送ってから、ぽつりとつぶやいた。
「さて……私はちょっと休憩しましょうか」
ずっと作業していたので疲れてしまった。
アリスティが戻ってくるまでのあいだ、しばらく休ませてもらうとしよう。
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