第1章9話:キャンピングカーの内部
「では機能を説明させていただきます。まず運転席があそこです。その手前の部屋がトイレ、さらに手前がキッチンです」
「ちょっと……え? トイレ? キッチン?」
まさかトイレやキッチンが存在するとは思ってなかったのだろう。
アリスティは唖然とする。
私はトイレの使い方と、キッチンの使い方を説明した。
「キッチンは、まず、こっちがシンクです。こんなふうに蛇口をひねれば水が出ますよ」
実際に蛇口を回して、水を出す。
「そしてこっちはコンロ。ここを回せばこのように……火が調節できますね」
コンロのツマミを回して、弱火、強火を切り替えてみせた。
アリスティが驚きながら言った。
「と、とんでもない技術ですね」
「そうですか……? まあ便利なのは認めますけどね」
「いえ、便利という次元では……調理場の常識が変わりますよ」
「お、大げさですね」
たかがコンロ。
たかが蛇口だ。
……いや。
今の異世界の技術では、火力を細かく調節することは不可能だ。
水も、井戸から汲むのが主流。
専門の魔法使いが近くにいなければ、火や水を自在に操ることはできない。
そんな世界からすれば、確かに蛇口やコンロは画期的な設備かもしれない。
「ちなみに見ての通り、この調理台の下は三段の収納棚になっています。ここに食器や調理器具を収納する予定ですね」
まだ収納棚にはフライパンと鍋しか入っていない。
しかし、今後少しずつ道具を揃えていくつもりである。
「では次にいきましょう。ここがリビング。見てのとおりテーブルと座席です」
テーブルを挟むように座席がある。
座席の数は4つだ。
そのうち、奥の座席2つは、壁にぴたりと接している。
ふと上を見上げれば、天井に四角い天窓がついている。
足元にはゴミ箱を一つ置いてある。もちろんゴミ袋は掛けた状態だ。
「座席も……すごくフカフカですね。特級品ではないですか?」
「うーん、そんなことはないですよ」
もっと上質な座席はいくらでもある。
まあ異世界の基準であれば、特別といえるかもしれないけど。
「まあ椅子は一番よく使うものですから、こだわりはしましたね」
クッションを使ってふわふわの座席を作った。
試しに座ってみたが、座り心地は最高である。
「ちなみにここのボタンを押せば、背もたれが後ろに倒れますよ。あとここにマッサージ機能もついていて――――」
「やっぱり特級品じゃないですか! こんな椅子見た事ないですよ!?」
ああ。
マッサージチェアは確かに特別な仕様……
というかオーバーテクノロジーだね。
なるほど。
これは特級品かもしれない。
「で、次の部屋がシャワールームです」
「シャワールーム?」
「つまりお風呂ですね」
「ええ!? お風呂があるんですか!?」
「まあ水浴びができるだけのスペースですけどね」
アリスティはもはや声を失っていた。
しかしどこかホッとしている様子でもあった。
もしかすると、お風呂を使えない旅を覚悟していたのかもしれない。
その予想が良い方向に外れて、歓喜しているのだろう。
さて、最後に、アリスティが使う寝室と……
私が利用する寝室を紹介した。
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