第1章8話:キャンピングカーの試運転


「ほ、ほんとに動いてますよ! お嬢様!」


「まだまだここからです」


運転ゴーレムがさらにアクセルを踏んだのか、どんどんスピードが上がっていく。


森に囲まれたこの草原は、決して平らな大地ではない。


しかし、キャンピングカーは問題なく走行していた。


「す、すごい……」


アリスティが感嘆していた。


「本当に馬車よりも速いですね……!」


「全力で走れば時速100キロぐらいは出ますね」


「時速?」


「つまり、今の何倍も速く走れるということです」


「え……!?」


アリスティが絶句する。


現段階でも馬車より数段速く移動しているのだ。


これよりまだ数倍速くなるとは想像もできないのだろう。


しかし事実だ。


まあ、半径300メートル程度のこの草原では、時速100キロで走るのは無理だけどね。


狭すぎるし、森に突っ込んでしまうだろう。


「問題なく走れそうですね」


キャンピングカーが草原を一周して戻ってきた。


目の前に停車する。


アリスティは感激をあらわにして言った。


「おみそれしました、お嬢様! ここまで速さを追及した乗り物は見たことがありません!」


「確かに馬車よりは何倍も速いです。でも、これはただ速いだけの乗り物ではありませんよ」


「……? どういうことですか?」


「実際に乗ってみればわかります。ちょうど乗り心地のテストもしたかったですし、乗車してみましょうか」


私はキャンピングカーのドアを開けた。


最初に小さな靴脱ぎ場がある。


左右30センチほどの非常に狭い土間である。


私のキャンピングカーは土足厳禁なので、ここで靴を脱ぐ。


靴はすぐ左にある靴箱へ収納する。


そして乗車した。


最初の部屋は、車内のリビングだ。


床にはマットを敷いており、さらさらした踏み心地だ。


「さ、アリスティも中へ。靴も脱いでください。脱いだ靴は左側にある靴箱へ」


「は、はい。では失礼して……」


アリスティがおそるおそる靴脱ぎ場にあがって、乗車しようとする。


しかし、すぐに目を見開いた。


「な、なんですかここは!?」


キャンピングカーの内部は、馬車の内装とは大きく違う。


壁や床材からして違う素材を使っているのだから、アリスティからすればとんでもない未来空間だろう。


私は得意げに言った。


「ふふ、すごいでしょう? 私の力作ですよ。一つずつ解説しますので、まずは中に入ってください」


「は、はい……」


靴を脱ぐアリスティ。


そして乗車した。


私はそんなアリスティに解説をはじめる。

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