第1章6話:キャンピングカーをつくろう!その2



(よし、素材が揃った。ついでに、炭素鋼にも変換完了だ!)


錬金魔法の【素材変換】で、炭素鋼をはじめとしたあらゆる素材を入手する。


(でも……素材変換って、どういう原理で"変換"しているんだろう?)


魔法だからそういうものだ、と片付けるのは簡単だ。


しかし私は、科学の存在を思い出してしまった。


だから原理や原則について研究してみたくなるのは、逃れえぬ性分だ。


まあ、ただ、それには時間がかかるに違いない。


錬金魔法そのものについて研究するのは今後の課題として、今はアイテム錬成に集中しよう。


(さて、ここからはパーツの作成だね)


といっても素材が揃えば、あとは完成品を錬成するだけだ。


細かい作業工程は錬金魔法によってスキップできる。


サクサクとパーツを完成させていく。


3分ほどで、タイヤが完成した。


(この調子でどんどん作っていこう!)


続いてフロントガラスやリアガラスなど、車窓の作成。


ドアやボンネットの作成。


夜でも走行できるようにライトの製作。


燃料タンクやエンジン機構などの内部構造も製作(キャンピングカーの燃料となる軽油は、素材変換と錬金魔法を駆使して入手する)。


最後に水を保管しておくための清水タンクを作る。


清水タンクの中には領都で買った飲料水を入れておく。


この清水タンクは、キャンピングカーで水を利用するために必要だ。


綺麗な水を利用したいので、浄水機も製作する。


よし、これで外装の部品は完成。


ひとまず組み立ててみることにした。


「うん、いい感じの車になりました!」


ここまで30分ほど。


立派なキャンピングカーがそこに出来上がっていた。


生活空間を広めに取りたいので、車体は長めである。


塗装がまだなので無骨な印象だが、結構いい感じじゃないだろうか?


ちなみにタイヤは、草原や山などの舗装されてないフィールドを走っても大丈夫なように、錬金魔法で強化してある。


この【魔法型タイヤ】なら、尖った石を踏んでも踏み砕けるだろうし、不安定な道を走ってもタイヤが壊れたりしないだろう。


また車のボディについても、魔物の体当たりぐらいなら耐えられるように、錬金魔法で強化しておいた。


さて……あとは内部の製作を行うだけだね。


「ん?」


ふと視線を感じて振り向く。


すると、アリスティが呆然とした目でこちらを見つめていた。


「アリスティ? どうかしましたか?」


「いえ、その……何を作られているのか、と思いまして」


「ああ。これはですね、馬がなくても走れる馬車……自動車ですよ」


「馬がなくても? そんなことができるんですか?」


「ふふ、それができるんですよ。まあ馬がないといっても、人が運転しなきゃダメですけどね」


私の言葉に、アリスティは理解不能だという顔をしたままだ。


私は微笑んだ。


「まあ、完成を楽しみにしていてください」


「はぁ……」


困惑顔のアリスティを横目に、私はキャンピングカー製作を再開した。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る